第7話才ある者
「生徒諸君これからグループ決めを行う。一人ずつ前に出てくれ。」
男は壇上に分厚い本を置いた。真っ白な表紙に黒い線が描かれている。
男が手をかざすと紫、黄、赤、青と色を変えながら光る。
「あーもうこの時期か」
本がしゃべった。これは魔法か。生物じゃない存在を生物にさせるとかなのか。
「この本は魔道具だ。魔力を送ることで機能するもので名前をオロバスという。ここでは学年ごとに三つのグループで分けられる。魔力、性格、野望、オロバスはそれらを読み取り分けていく。手をかざしてレイドと唱えるんだ」
一人の生徒が前に出る。本に手を伸ばしてレイドと唱えた。足先から紫の光が体をめぐって指先から放出される。
「君は保守的な人間だな。魔力量は高い。適正魔法は岩。そうだなイレブンアイに決定だ」
レイブンアイって何。一とかAとかで分けないのか。また次の生徒が手をかざした。
「君はプライドが高い。適正魔法は闇か。おもしろい。名前を教えてくれ」
「ヴァイオス・ホークだ」
「なるほど、ホーク家のものか納得だ。ヴァイオスはルグルスに決定だ」
今度はルグルスよくわからない。どんな組の分け方してんだ。今度は女子生徒が手をかざした。
「君は正義感の塊だな。適正魔法は水。ウリエルに決定だ。」
誇らしげな顔をして会場を出た。本は次々にその三グループと分けていった。
途中で飽きたのかグループしか言わなくなっていた。そろそろ俺の番だな。
見た目だけの判断ならレイブンアイは知性、ルグルスは野望、ウリエルは正義みたいな感じだな。兄さんはどれだったんだろう。よしこの組み分けだとどれも性格に合わないけどウリエルが一番ましかな。本の前で手をかざす。
「レイド」
「ん、なんだお前気持ち悪いな。心と体がチグハグだ。それに知らねぇ情報ばかりが頭ん中にあるな。名前はなんだ」
「バン・ルシウス」
「ルシウスあいつの弟か。そうかそれはいい。ならばウリエルに決定だ」
危ない転生者だとばれるとこだった。シンの弟で入れられたってことはやっぱ兄さんもウリエルなのか。会場を出るとシンが待機していた。
「待ってたよ。どのグループだった」
「ウリエル」
「ウリエルか結構いいね」
「兄さんもウリエルだった?」
「ううん、僕はルグルスだよ」
兄さんがルグルス。意外だな。それこそウリエルもしくはイレブンアイかと思った。
「これはどんな分け方なの」
「古代にいたとされる獣の名前だよ。イレブンアイはもっとも賢くめざといとい鳥獣。ルグルスはもっとも狡猾で気高い狼。ウリエルはもっとも正しく情熱的で忠実的な神獣」
「それがモデルってことね」
「クラスの場所わかるか?」
「わかんない」
「案内するよ」
さっきの会場はイベント室という名前らしい。文字通りイベントを行う時に使われる部屋で何かと色んなものがあるらしい。建物がたくさんあるのはそれぞれの寮とグループでわかれるからで授業、課外活動、任務は基本も違ってくるとか。それがいわゆる一%の正しき努力だとか。レイブンアイは北校舎、ルグルスは東校舎、ウリエルは西校舎、イベント室が真ん中だ。南校舎はサークル活動の拠点好きな分野の研究、活動ができる。
「ここが西校舎一年は一階だから。バン頑張れよ」
「うん」
校舎の中は俺の知る学校とは大きく違った。まったく別ではないが自由だ。変な置物がたくさんあるし、そもそも空間が外観と違う。広いし、他の階への階段がない。新入生はこちらへの紙が貼られてる。どんだけわかりにくいんだよ。
案内通りの教室に入る。すると既に席に座っている。これは魔法だな。もう全員いるのか。制服を着ていない女の人が教壇に立つ。
「このクラスを持つセシル・クーデルカです。植物学専門の教師です。皆さんのお気づきの通り、教室に入ることがトリガーでワープして今いる席に座っています。これはクラス分けだと思ってください。ウリエルの中でも一クラス五十人ほどで三クラスに分かれます。あなた達はAクラスです。A,B,Cに深い意味はなくランダムに振り分けています。一年間よろしくお願いします。ではまず、魔法適正と魔力量を測定します。一人ずつこちらの水晶に触れてください。赤に光れば炎適正、青に光れば水適正、黄緑に光れば草適正、紫に光れば雷適正、緑に光れば風適正、黄に光れば岩適正、黒に光れば闇適正、白に光れば光適正があり、光が強ければ強いほど適正魔力量がたかいとされています。具体的な数値が知りたい場合放課後イベント室に行ってそこにいる先生方に言ってください。複数適性を持つ場合はその数光ります。」
才能主義だからこそ、才能開花に絶対的力を入れているわけか。楽しみだ。どんな適正を持っているだろうか。魔力量はどれほどだろうか。待ち遠しい。
「ではイレーナ・アルレヒドさんからどうぞ」
彼女は最初の方にオロバスに水適正があると言われていた女の人だ。肩ほどの髪に力強い目。鼻筋の通った綺麗な顔をしている。
彼女が水晶に触れると青く強く光る。目がまぶしい。次に光ったのは赤だ。そして、緑、紫少しずつ光は弱まっていったものの四属性というのはすごいのでないだろうか。彼女のような存在を天才というのだろう。
その予想は的中していたようでほとんどの生徒が二属性くらいで光もそれほどではなかった。
「バン・ルシウスくんどうぞ」
水晶に触れる。光った色は黒だった。それも今までないほど弱く、昔祭りで当てたハズレの小さなお菓子型のライトみたいなレベルだった。そしてすぐに光はやんだ。俺には闇属性のそれも弱い力しかないということだ。
ど、どうなってんだよ。俺は主人公だぞ。そうだ、きっと何か水晶では測れない才能があるはずなんだ。
顔を上げるとみなの憐れむ視線が刺す。可哀想、、、そんな言葉が聞こえた。
放課後すぐに具体的な数値とやらをはかっても過去最低レベルだと言われた。
生まれ変わっても結局俺はダメなのかよ。
天才の弟の没落、兄に全てを奪われた弟。それが俺の評価だった。
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