第10話 探索者講習 final
なんだかんだで、講習も最終日。
今日のテストを合格すれば私も晴れて探索者の仲間入りだ。
私は気合を入れて、自分の短剣を腰につけている武器用のベルトにさして協会に向かう。
協会に着くと、受講生たちが集まっていた。今日のテストは、実際にダンジョンのボスと戦い、その戦い方や戦術を評価するものだった。
「よし、そろそろ始めるか。みんな、装備を整えて準備してくれ」
武本さんが声をかけると、受講生たちは武器や盾を手に取り、準備を始めた。
私も自分の装備を確認しながら、心を落ち着けていた。今までの講習で学んだことを思い出し、慣れた動きで短剣を握りしめた。
武本さんは、実技試験の初日に入ったIランクの粘魔ダンジョンに入る。
私たちもその後ろに続く。
武本さんは淡々と先にいるピュアスライムを倒していくと、そのまま5階層のボス部屋前にたどり着いた。
「準備はいいか?これから、お前たちには一人づつこの部屋に入ってもらって、ボスと一対一で戦ってもらう。もちろん万が一のために俺も中に入るが、基本的に命の危険がある攻撃以外は、助けるつもりはない。それでは、始めるぞ!」
受講生たちは少しずつ部屋に入っていく中、私は最後尾に位置した。
だが、最後になってしまったことで、私はより緊張してしまった。
「お前が最後か。落ち着け、しっかりと自分の力を信じて戦え」
武本さんがそっと肩を叩いてくれた。
私は彼の言葉に励まされ、深呼吸をして部屋に入った。
そこには、ヒュージスライム――ピュアスライムの上位種――が待ち受けていた。
私は身構え、短剣を握り締めた。ヒュージスライムは私を見据え、大きな口を開けて吸い込もうとしているようだった。
私は素早く回避し、短剣で攻撃を仕掛けた。しかし、ヒュージスライムの体は
「これじゃあ、勝てない……!」
焦りが募る中、私はヒュージスライムの攻撃を避けながら、様々な戦術を考えていた。
私のSPはとてつもなく少ない。
なので、安直に【闘気】を使って戦うという手札は使えない。
しかし、このまま避け続けてもいつかは私の体力が限界を迎えるのは目に見えている。
私は覚悟を決めた。
私は闇属性を自分の短剣に纏わせ、その力で短剣を補強することにした。
そして、ヒュージスライムに向かって全力で攻撃を繰り出す。私の短剣は、闇属性の力で補強され、ヒュージスライムの体に深い傷を刻み込んだ。
SP 5/6
しかし、ヒュージスライムはまだ立ち上がり、私に向かって攻撃を仕掛けてきた。私は回避しながら、再び闇属性の力を短剣に集中させた。
そして、私は短剣をヒュージスライムに突き刺し、同時に【闘気】を相手に移した。ヒュージスライムは激しく震え、視覚や感覚にデバフを受けた。
SP 2/6
私はその隙に、再び攻撃を仕掛けた。ヒュージスライムは弱体化していたため、私の攻撃を無抵抗で受け入れる。
短剣はぬるりと魔石を二つに切り裂いた。
SP 1/6
ヒュージスライムは最後の一撃を食らうと、身体が溶けるようにその場に崩れる。
私は賭けに勝った。
「やったあああああ!!!!」
私が試験に合格した瞬間、武本さんが満足そうな表情で近づいてきた。
「よくやったな。お前は探索者として十分だ。これからも、しっかりと自分の力を磨き上げていくといい」
私は嬉しさで胸がいっぱいだった。この2週間、自分がそんなに強くなれるとは思っていなかった。でも、講習で学んだことや、ヒュージスライムとの戦いで得た経験を通じて、自分自身の成長を実感していた。
「ありがとうございます、武本さん。これからも、一生懸命頑張ります」
武本さんは微笑み、私の頭を撫でた。
「そうだな。お前はこれからもっともっと強くなれるはずだ」
私は武本さんと握手を交わした。
しばらくすると、部屋の真ん中に宝箱が現れる。
ボス報酬と言われているものだ。
私は武本さんに一度目配せをすると宝箱を開けに行く。
中には黒い装飾がついた短剣だった。
「ほお、武器が出たのか。後で協会の受付で見てもらうといい」
「はい、そうします」
初めてのダンジョン報酬に頬がにやける。
部屋から出る前に、ヒュージスライムの魔石も拾いポーチに入れる。
そうして、ようやく私は講習が終了したのだと実感したのだ。
こうして私は、探索者として一歩目を歩んだ。
ダンジョンが出来たのでご飯に困らなくなりました ゚針卍 @raincoatslug
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