第9話 探索者講習Ⅵ

 次の日、今日も探索者講習に参加するため探索者協会の前に来た。


 何だかんだで、今日やる講習は実践的なので楽しみではあるのだ。

 ストレッチをして待機していると他の受講生たちも協会前に集まってくる。


 集合時間の9時になった。武本さんがフードを被った女性の……おそらく探索者の人と歩いてくる。


「おはよう、今日は特別ゲストに来てもらった。この人数に俺一人で戦い方を教えるのは時間もかかりすぎるからな。それじゃあ、フードを取って自己紹介を頼む」


「はーい」


 女性の声に、私は聞き覚えがあった。


 (ま、まさか!)


「はーい!みんなー!花生はなおいちゃんねるの花生 美希はなおい みきだよー!」


「わぁ!本物だああああ!」


 私は思わず声が出てしまった。

 それもそのはず、花生 美希はなおい みき――みきちゃん――は私がダンジョン配信者になろうと思ったきっかけ……つまり推しである。


 私以外にも、彼女の姿を見て驚いている受講生は多い。

 何せ彼女は、チャンネル登録者300万人超えの大物配信者だ。

 

 「今日は私も講師として、探索に必要な知識を教えていこうと思うので、みんな!頑張ろうね~!」


 私は驚きを隠せなかった。憧れの人物が今目の前に現れ、しかも私に探索者としての知識を教えてくれるというのだ。

 その喜びと緊張で、言葉が詰まってしまいそうだった。しかし、みきちゃんは穏やかな笑顔で私たちを迎え入れ、私の心を静めてくれた。


 「それじゃあ、今日は武器の使い方を一通り教えていこう。それぞれの適性に合った武器を見つけ、ある程度武器の使い方を覚えたら、【闘気】の使い方も同時に練習していくんだ」


 武本さんはバックから様々な武器を取り出して、地面に並べ始めました。

 普通のバックに入りきらないほどの武器の数に驚かされましたが、あれはダンジョンで手に入るボス報酬の1つである【アイテムバック】なのだろうと思った。


 武器の種類は剣や刀、短剣、ハンマー、大弓、短弓などがあり、それらが地面に並べられていた。また、大きな盾や小さい盾も置かれていた。


 個人的には、剣やハンマーといった大きな武器を使ってみたいと思っているが、現段階では短剣を使うのが精一杯だ。そこで、私は並べられている武器の中からおとなしく短剣を選ぶことにした。


 他の受講生たちも、それぞれ自分に合った武器を選んでいった。盾を選ぶ受講生も何人かいたが、彼らはきっとタンク系のスキルを手に入れたのだろうと思った。


 ちなみに、私の推しであることみきちゃんは、いろんな武器が使えると公言しているが、メインウェポンは刀だ。なんでも家宝の刀を生産系スキルを持つ人に強化してもらい、実戦でも使えるように作り直してもらったそうだ。


 一度でいいから生で戦っているところを見てみたい。この講習中に見られるだろうか……。

 そんなことを考えていると、武本さんから声がかかる。


 「それじゃあ、今から武器の使い方を教えるから、協会の中の地下にある修練室で集合だ。ついて来いよ」


 修練室まで階段を使いついていく。本来はエレベーターで行けるが今回は人が多いので階段を使っているらしい。


 階段を下りきるとそこには大きめの扉があった。

 扉を開けると、中はとてつもなく広く、いや、異常なほど広い。

 なぜなら、おそらく野球の球場一戸分ほどの広さが扉を開けると広がっているのだ。


 それは探索者協会の大きさを考えても自然な大きさではなかった。


 「驚いたか?これは協会に所属してる空間魔法を使えるやつが普通の会議室ほどの部屋をここまで広げてくれてんだ」


 武本さんは自信ありげにそういうと、みきちゃんを連れて中に入っていく。

 私たちも遅れないように続いて入った。


「それじゃあ、今から武器の使い方を教えていくぞ~」


 武本さんは受講生たちに、それぞれが選んだ武器の使い方を教え始めた。短剣を選んだ私は、切りつけや刺し上げといった基本的な攻撃方法から教わった。同時に、相手の攻撃をかわす方法や防御の仕方も教えてもらった。


 しばらくは基本的な動きの練習が続いたが、次第に難易度が上がっていく。武本さんとみきちゃんは受講生たちに、実戦的な動きや戦術を教えてくれた。それぞれの武器に合わせた攻撃方法や戦い方を細かく指導してくれた。


 練習は終日続き、私たちは汗だくになりながらも、自分たちが選んだ武器を上手く扱えるようになっていた。終わりに、みきちゃんが受講生たちに言った言葉が印象的だった。


「武器を選ぶことは、自分自身を選ぶことでもある。自分が何に向いているか、何をしたいのかを見極めることが大切だよ。だからこそ、自分が選んだ武器を大切にして、上手く扱うようになってほしい」


 私たちはそれぞれが選んだ武器を大切にして、より強くなるための訓練を続けていくことになるのだろう。

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