第6話 探索者講習Ⅲ

 私は慌てて【ステータス】と唱える。

 すると薄青い画面のようなものが現れる。


【ステータス】

 MP 10/10

 SP 6/6

 STR 5

 CON 7

 POW 15

 DEX 10+0.01

 INT 10


 スキル

 暴食


 暴食…………?

 一体このスキルは何だろう?

 なぜ自分はスキルを手に入れているんだろう?音を聞き逃した?


 まったく理解できないまま、私は暴食の文字に指で触れる。

 すると、暴食という文字の下に説明文のようなものが現れる。


 暴食 なんでも食べることが出来る。食べたモンスターの力の一部を自分の力に変換できる。


 とりあえず、スキルを確認すると私は何でも食べられるらしい。しかも、モンスターを食べると自分の力にできると……。

 そもそも、モンスターって食べられるのだろうか?もちろん、獣魔族のモンスターは一部高級食材として振る舞われることがあると聞いたことがある。

 また、竜族に関しては何でも若返ったなんて眉唾な噂もあるくらいだ。

 だけど、ここは粘魔族、スライムのダンジョンだ。スライムを食べたなんて聞いたことがない。


(スライムって美味しいのかな?確かに見た目は崩れたゼリーに見えなくもないけど……)


 そう考えていると最後の受講生も入ダンしたのか、武本さんが後ろからやってくる。


 「よし、みんな入ったな?スキルの確認は出来てるか?これからお前たちが生きていくための武器になる。しっかり使い方の確認をするんだぞ」


 みんな真剣に自分のスキルと向き合ってるのか、その目は真剣だ。

 だけど、私はそれどころじゃない。

 

 今更だけど、ステータスについている+0.01、これも意味が分からない。これもスキルの一環なんだろうか?

 だけど私は、まだモンスターを食べたことはないはずだ。

 意味が分からない。


 しかし、悩む時間は終わりなようだ。


「それじゃあ、これから全員でダンジョンを一度攻略する。ついてきて、本物のダンジョンがどういうものなのか肌で感じてくれ」


 それじゃあついて来いよ~、と言って武本さんはみんなの先頭を歩いていく。

 他の受講生たちもその後ろをついていく。私も一番後ろから続いた。


 ダンジョン、そう聞いて思いつくのは迷路のようになっており、隠し部屋があり、正規ルートから外れると宝箱がある。

 そのようなものを想像するのではないだろうか?


 しかし、私たちが今潜っているダンジョンはそれとはかなり食い違う。

 まず、どのランクでもダンジョンは基本一本道だ。毛色が違うとしたら獣魔族ダンジョンだろう。このダンジョンはフィールド型と言ってどこかに階段はあるが基本的には森や砂漠、野原といった自然をモチーフにしたようなダンジョンになっている。


 しかし、それ以外のダンジョンは基本的には一本道で曲がり道などなく、階段の前に少し広めの空間があり、そこに行くとモンスターが待っている。それが私たちが潜っているダンジョンだ。 


 そうこうしていると、少し広い場所に出る。その部屋の奥には通路が続いている。

 そして、部屋の真ん中には白色の小さいジェル状の物体。それこそがピュアスライムである。


 ピュアスライムはほぼ透明な白いジェル状のスライムで、真ん中に魔石と言われる全ての魔物が持っている石を浮かせて体を引きずりながら移動するモンスターだ。


 モンスターは魔石を壊されると即死する。しかし、魔石はダンジョン研究やエネルギー研究において1番必要な素材である。

 そして、スライムは魔石を残したまま倒すのが最も難しいモンスターと言われている。


「今日はモンスターを倒すところを見せる」


 そう言って武本さんは小さい金槌を出して歩いて近づいていく。


「さっきは脅すようなことを言ったが、ピュアスライムは基本的に攻撃方法は持っていない。こんな普通の工具店に売ってる金槌に少し【闘気とうき】を纏わせるだけで武器も溶かされずに魔石を壊すことが出来る。ちなみに魔石を残して倒す方法は魔法で丁寧に倒す以外説明できないから、チャレンジしたいやつは勝手にやってくれ」


 と、説明するや、金槌が少し黄色く光る。それをピュアスライムに振り下ろすといとも簡単にピュアスライムの魔石は砕け散り、薄白いジェルは重力に従い地面に広がる。


「わかってるとは思うが、モンスターはゲームみたいに倒しても光って消えたりしない。だから必要な素材は自分で瓶につめたり、解体用のナイフで剥ぎ取って持ってくるしかない。それに関しても別日で講習をするからしっかり参加するように」


 それだけ説明すると、武本さんは立ち上がり、全員に着いてくるよう伝えて先に進むのであった。


 私はここでピュアスライムの砕けたかけらを1つ拾う。


 (誰も、見てないよね?)


 周りの受講生が武本さんについて行くことに集中してることを確認する。

 そして、こちらを見てないことがわかった私は、その魔石の欠片を


 魔石はとても甘く、飴玉のような味がした。今まで食べたことがない味に表現はできないが舌の上で広がるような自然な甘みに、私の頬も自然と緩くなる。


 そして私は【ステータス 】と頭で唱えて、確認をする。


 【ステータス】

 MP 10

 SP 6

 STR 5

 CON 7

 POW 15

 DEX 10+0.02

 INT 10


 スキル

 暴食


 DEXの上昇分が0.01増えている。つまり、他人が倒したモンスターを食べても私のステータスは増えるということだ。

 そしてもう一つの事実がわかる。


「私は、1度ダンジョンに来たことが……ある?」

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