第7話 探索者講習Ⅳ
自分の記憶にない出来事があるかもしれい不安が私を襲う。
だけど、今は講習の途中だ。
私は、一度今考えていたことを飲み込み階段の先に進む。
階段を降りると列の最後尾はまだそんなに離れていなかった。
次の階段の前まで歩いていく。
ダンジョンは五階層のボスモンスターを倒すまで出てくるモンスターに通常は変化がない。
では、五階層まで簡単に行けるのか?
それは少しだけ違う。
二階層以降に出てくるモンスターは一階層で倒したモンスターと同じで少し強くなっているか、そのダンジョンの種族のレア種が現れる。
しかし、レア種が出てくる確率は相当低いらしい。また、出てくるレア種はその階層に出てくるモンスターより、1つ上のランクのモンスターが現れる。
つまり、このIランク粘魔族のダンジョン――ピュアスライム――の上位種だとビックスライムかレッドスライム、ブルースライムといった色付きスライムと言われるモンスターが現れることもある。
そうこう考えているうちに、次の部屋にたどり着いた。
武本さんは前に出て、受講生のことを見る。
「今回もこの部屋のモンスターはピュアスライムだ。さっきも見せた通り、このモンスターはそんなに強くない」
そこで、と一拍置いて受講生を見渡す。
「誰かピュアスライムを倒してみたいやつはいるか?もし、やりたいやつがいたら挙手しろ。いない場合はこちらで適当に指名する」
受講生内で騒然とした雰囲気になる。私は手を挙げてその場で跳ねてアピールした。
「はいはい!私やりたいです!」
「お、じゃあ穂満やってみるか!てかなんでそんな後ろにいるんだ、もっと前に来い。見えないだろ」
私はほかの受講生の間を抜けて前に出る。
「それじゃあ、この金槌貸すからピュアスライムに近づいてみろ」
私は頷いて、金槌を受け取る。前方のピュアスライムを確認すると少しづつこちらに近づいて来ていた。しかし、こちらにはまだまだたどり着く雰囲気はない。
「集中しろよ。金槌をただ振り下ろすだけでもあいつは倒せるが【闘気】が使えて損はない。腹のあたりにある力に集中してみろ。それに気づけたら、そいつを腕まで移動させるイメージだ」
ピュアスライムとの距離はまだ随分とある。目をつぶり、お腹のあたり集中すると黒い
私はその
ゆっくりとだが腕の方に靄は移動していく。
「ほう、見た目にそぐわず、
「え?」
武本さんの声に反応して目を開けると右手のあたりに黒いオーラのようなものが纏っていた。
「穂満、お前才能あるな。【闘気】はスキルにもよるが普通のやつだと2日くらいかかるんだがな」
「そうなんですね!」
私は才能があると言われて普通に嬉しかった。将来はダンジョン配信者になりたいのだから才能なんてなんぼあってもいいですからね!
「それじゃあ、そいつを金槌に纏わせてみろ」
武本さんに言われて集中するが、【闘気】はなかなか金槌に移ってくれない。
「難しいだろ?【闘気】は体の中を動かすことに関してはそんなに難しいことは無いんだが、武器に移そうとするとその武器に関するスキルがないと纏わせにくいんだよな」
「そ、そうなんですね」
話を聞きながらも、力んで【闘気】を纏わせようとしたため、返事にも力が入る。
20秒ほど経つと、やっと金槌に【闘気】を纏わせることが出来た。
ちょうどいいことにピュアスライムも目の前に来てくれている。
「よし、それだけ【闘気】が纏ってたら大丈夫だ。気を付けて魔石を叩くんだぞ」
「はい!」
私は、えいっと言って叩くと魔石にはヒビが入る。
どうやら1回で壊せなかったらしい。もう一度、金槌を振りかぶり、魔石を叩くと魔石は2つに割れる。
「おめでとう、初討伐だな」
ピュアスライムは魔石が壊れるとジェル状の身体が重力に従うように地面に広がる。
「これがスライム……」
「死んだあとはただの粘液にしか見えないよな。どうやら体は魔力で出来てるってのが研究所の結果らしいぞ」
「そうなんですね……」
考え深そうに眺めていると、武本さんから肩をたたかれる。
そうやら先に進むらしい。
急いで立ち上がろうとするが足に力が入らなかった。
「あ、あの、足に力はいらなくて……」
「あぁ、もしかすると、SPの使い過ぎかもな。確認してみろ」
私は【ステータス】の確認をする。
【ステータス】
MP 10/10
SP 1/6
STR 5
CON 7
POW 15
DEX 10+0.02
INT 10
スキル
暴食
確認するとSPが5減っていた。残りが1しかない。
「残り1しかないです……」
「まじか、結構SP少ないな。まあ続けていれば伸びてくるだろ」
気にするな、と言って私を起こしてくれる。
起き上がると体は重いが前には歩けそうだ。
「そのままゆっくりでいいからついて来い。危険なこともないし、大丈夫だとは思うが何かあったら声かけろよ」
「はい……」
武本さんに先ほど使った金槌を返して、後ろにいた受講生たちに前を譲る。
私はゆっくりと周りの受講生に追随するように歩いた。
みんなが私の前に行ってから、先ほどの戦闘で拾っておいた魔石の片割れを取り出すと口に入れる。
【ステータス】
MP 10/10
SP 1/6
STR 5
CON 7
POW 15
DEX 10+0.03
INT 10
スキル
暴食
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます