わたしと私。ぼくと僕。

前書き、零と穂香過去編と心境のお話です。また、少し重い話ですので飛ばしてもらっても構いません。


穂香


それは、本当に幼いころ。幼馴染の零と公園で遊んでから一緒に帰った後のことだった。


「ぱぱ……まま……?」


私の両親は忙しくて、いつも働いていて夕方まで零と遊んでから家に帰っていた。でも、夕飯の時はいつも家族そろってご飯を食べていてすごく優しかった。


いつもは、「お帰り。」とくれる言葉はなかった。そのかわりに、生臭いにおいがした。


リビングのドアを開けるとそこには。


赤色の液体の中で倒れている両親の姿だった。


「ぱぱ……まま……?」


そこからは私の記憶はない。


覚えているのは、赤い光とサイレンの音。そして。


「ほのか!ほのか!だいじょうぶ!?」


と、声をかけてくれる零の言葉だけだった。


聞いた話では、強盗が押し入ってきて殺したそうだ。私の大事な両親を。


「ゆるせない。ゆるせない。」


私は零の家で保護されることになった。


でも、零の家族の中に私が入ることはできなかった。勿論、幼馴染だったので優しかったし、愛情もくれた。でも。


「ぱぱ……まま……」


私は家族を。両親を。忘れることはできなかった。


そして、いつからだろうか。わたしは。


「零。」


「なに?ほのか。」


「あなたは、私の従者よ。服従しなさい!」


わたし穂香王女になってしまった。


色々な無茶なことをやらせていた。それは、許されないことだろう。でも。でも。私は馬鹿みたいな。許されない願いもあった。それは。


【零を失いたくない。】


もう二度と大切な人を失いたくない。でも、王女は無茶なことをやらせてしまっている。




穂香が王女様になってしまったのは家族が死んでから少しした後だった。


ぼくは穂香をずっと心配していた。あの日を境に元気がなかったように見えていたから。


でも、ぼくは何もできなかった。


そして、穂香は王女様になってしまった。


「あなたは、私の従者よ。服従しなさい!」


この言葉を聞いて、ぼくは元気な彼女が戻ってくれたと思った。


だから、王女様の従者になって願いを聞いていた。


でも。王女様は穂香だった。


隠れたところで泣いていた。


穂香が穂香の両親を思い出して泣いていた。


ぼくは王女様穂香を泣かせたくなかった。


だから僕は。


ぼくから従者になる事を決めた。


もう二度と王女様を泣かせないように。悲しませないように。


願うことはただ一つ。


【穂香が心から笑って過ごせるようになってほしい。】


そのためなら。


僕はどんな困難だって乗り越えることができるはずだ。

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