なんでも?

「え、ええと……氷翠さん……?」


「……絶対に離さない。」


どういうこと……?


僕は今、裏路地で氷翠さんさんに抱き着かれている状態だ。いやなんで?


さっきまで殺気にあふれていたのに…急に殺気が消えたと思ったら抱き着かれた。いやほんとになんで?


「氷翠さん…とりあえず、放してくれると嬉しいんだけど…」


もっと手に力を強める氷翠さん。柔らかい感触が…じゃなくて。


「…嫌。」


「制服汚れちゃうし…」


王女様は僕の汚れに敏感だからすぐばれて怒られちゃう。


「嫌。絶対に離さない。」


「それに、王女様にもほかの女子に触らないでって、厳命されているし…」


「嫌。……零の女の子?」


僕の服を嗅ぎ始めた氷翠さん。やわらかい…じゃなくて。


「ほかの女のにおい…覚えた。」


氷翠さんはそのまま僕から離れた。


「待っててね。その邪魔者を壊してくるから。」


「ちょっ、氷翠さん!?」


僕はどこかに行きそうな彼女の手を捕まえた。


「零?放して?零に纏わりつく虫を壊しに行くから。」


たぶん、虫って王女様のことだよね。絶対に止めなきゃ。


「氷翠さん。僕は王女様に纏わりつかれていません。」


「王女様?それが君の悪い虫なんだね。」


「だから、違いますよ!」


どうやったら納得してくれるのかなぁ。あ、そうだ。


「王女様に何もしないって約束してくれるなら何でも言うこと聞きますよ!」


ずっと僕の手を振り払おうとしてた氷翠さんの手が動きを止めた。


「…なんでも?」


すっと僕の顔に近づけてきた。ち、近いなぁ。


「は、はい。」


「…わかった。いいよ。」


ふぅ。王女様への危害を事前に抑えられてよかった。

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