蟲独の花
前書き 氷翠視点です。
……何者なのだろうか。私が何年も練り上げ、研鑽してきたモノを簡単に受け止めるどころか、何もないように話しかけてくる彼は。
「……邪魔。」
ナイフを離して急所を狙って足を蹴り上げた。普通だったら当たるはずの攻撃も。
「氷翠さん。落ち着いてほしいんだけど。」
またよけられた。あの場所を生き抜いた私の攻撃が。全てを停止させてきた私の攻撃が。当たらない。当てられない。
どうして?
「……君は誰?」
「あっ。やっと落ち着いてくれた。さっきも伝えたけど改めて。僕の名前は零。」
「そう。退いてくれる?」
「もうちょっと待ってくれるかな?彼らがもう少し離れてからでいいかな?」
「そう。彼らの仲間なのね。」
「え?違うよ。たまt……わっ!」
あいつらの仲間なら中身はあいつらと一緒なのだろう。なら、壊してもいいよね。
「ちょちょちょ。まって氷翠さん!」
斬る、払う、殴る。肘、膝、拳、ナイフ。様々な攻撃をコレに当てようとする。
もう、ぐちゃぐちゃになって跡形もならないはずだった。
でも。
「よっ、ほっ……落ち着いて!氷翠さん!」
コレには当たらない。
これには当てられない。
彼には……当てたくない?
だって、洋服とほんの数ミリのところを狙ってる。
幼いころから、私には友達……いや、隣にてくれる存在はいなかった。生まれたころには、愛情よりもナイフを握らされ。歩くよりも相手を壊すすべを身に着けて。そして、数多の屍の上に私はいる。
壊して。壊して。壊して。私は独り。絶対に行かなければならないとかで行っている学校でも私は独り。高嶺の花なんて言われているけど。私はそんな綺麗な花じゃない。周りを壊してしまう蟲毒の花。
でも、目の前の彼は壊れない。壊せない。壊そうとも思わない。
ふと、胸がうずいた気がした。
彼のことをもっと知りたい。そして、独占したい。彼の意識を私だけにしたい。
「逃がさない。」
私は彼を捕まえた。
後書き
ラブコメですか……?これ。
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