28話 冒険者たちの視線
「なんということだ……」
スターバーのつぶやきに、周りの冒険者たちはため息を漏らすばかりだった。
峠の木立に身を潜めた冒険者たちは、平地で展開されているクレタオスとレオンの一騎討ちを見つめていた。
サラフは、成り行きを見守っている自分が震えていることに気づいた。
……俺に同じことができるか? ありえない。
ついこの前まで一緒に行動していたレオンが、たった一人でSランクドラゴンとの死闘を演じている。
誰も入り込めない。怖くて加勢に行く勇気が出せない。
レオンはそんな相手と堂々と渡り合っているのだ。
「あれが底辺か。底辺の概念が壊れるねえ」
カークスが軽口を叩くが、彼の声もやはりかすれている。
「いくら片目を失っているとはいえSランクだ。私でもあいつと戦えと言われればキモが冷える」
スターバーまでそんなことを言い出す。
……仕方なかったんだ。俺たちは折り合いがつけられなかったんだ。
サラフたちがレオンを追い詰めていた事実はもう広まっている。しかしあのままレオンの正義感についていったら、いつか困窮によって倒れていた。サラフは、悪評を立てられても受け入れる覚悟でレオンを追い出す策略を進めていった。
あの頃のレオンとサラフは同じくらいの実力だった。せいぜい属性を使いこなせるかどうかの差くらいしかなかった。
なのに、もうどうしようもないほど引き離されているのをサラフは感じた。
「確かにあいつはすごいけど……」
マイナがつぶやく。
「押されてるように見えるわ。反撃も効いてないみたいだし……」
レオンの攻撃はほとんど通っていない。クレタオスの動きも鈍らないし、このままでは押し負ける。
そう思った瞬間、レオンの膝がかくんと折れた。
「あっ――」
一本角の刺突――それを、レオンは受け止めた。
星撃剣を手放し、両手でいなしながら掴んだのだ。クレタオスが頭を上げると、レオンも一緒に空中に運ばれる。
クレタオスが頭を振り回す。レオンはあっけなく飛ばされた。地面に叩きつけられて起き上がれない。
「まずいぞ……!」
「ちょっ、どうすんのよ!? あたしらじゃ行ってもできることないわよ!」
「く……」
「行かなくていいよ。無理しないのが一番」
その声は、全員のうしろから響いてきた。
振り返ったその先にいたのは――
「クロハさん!」
新調したという鎧を纏ったクロハ・アップルズの姿だった。すぐにスターバーが歩み寄る。
「瘴気結石の話は聞いているぞ。君こそ無理して出てきただろう」
「私は無理すべき人間です。でも、あとでちゃんとお医者さんに診てもらうことになってますからご心配なく」
「どんな理屈だ。病み上がりの体でSランクドラゴンに挑むつもりなのか」
「そうです。幼なじみが危険なので、長話にはつきあいませんよ」
「あ!」
スターバーが止める間もなくクロハが走り出した。アースを纏って急加速したクロハの姿は、一瞬で遠くなっていた。誰もが呆然と見送った。
「あたしら、このままでいいのかな……?」
「…………」
サラフは、戦場をきつい目つきで睨んだ。
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