第7話 浮気

 土曜日、ショッピングモールで白井さんと待ち合わせして、買い物を始めた。


「やっぱり、男の人ってスカートが良いの?」

「デートだったら、スカートの方が良いと思うよ。いつも、そんな感じの服でデートしてるの?」

「そうだけど、やっぱり駄目?」


 今日の白井さんは、黒のニットに白のパンツとシンプルなコーデだ。別にダメってわけではないけど、カジュアルすぎてデートって感じじゃない。


「私って、スカート似合わないんだ。水泳やってたから肩幅も広いし、それこそ女装した男みたいになっちゃう」

「それは多分、似合わないスカート履いているからだと思う。肩幅広いんなら、下の方にボリュームおかないと。タイトじゃなくて、フレアタイプにするといいよ。あとトップスも今日みたいなタートルネックじゃなくて、Vネックにして、カーディガン羽織ると、縦のラインが強調されて肩幅狭く見えるよ。」


 服を選びながら、肩幅を誤魔化すためのコーデの仕方を教えた。


「さすが、参考になるな」

「そんなわけだから、これなんかどう。試着してみて」


 ボリューム感のあるプリーツスカートを取り出して、白井さんに試着を進めてみた。恥ずかしいと渋る白井さんの背中を押しながら、試着室へと押し込んだ。


「意外と似合うかも。でもかわいすぎない?キャラに合わないというか、自分じゃないみたい」


 白井さんが恥ずかしそうにしながら、試着室のカーテンを開けた。


「似合ってるし、普段とギャップがでて、逆に良んじゃない?」

「こんな女の子っぽい服着るの久しぶりだけど、たまにはいいかも。」


 白井さんはスカートの裾を少し持ち上げて、鏡で自分の姿をみていた。その顔から気に入っているのがわかった。


 ◇ ◇ ◇


「爪のネイルは、デートの時は控えめにして、クリアネイルでツヤを出すぐらいにしておいた方が良いよ」

「え~、かわいいのに」


 買い物を終え、カフェで一休みしているとき、気になっていたことを伝えた。彼女がネイルしているのを好きではない男は、意外と多い。

 白井さんはネイルストーンをつけた爪を見つめながら、ため息をついた。


「そういえば、朝日って、課長と付き合ってるの?」

「えっ、なんでバレた?」

「隠してたつもりなの?色違いのスカート持っているし、付き合っているの気づいてほしいって匂わせているかと思ってたよ」


 課長と一緒に買った色違いのスカート。同じ日に履いてくることはなかったが、それでも気づくあたりは女の勘はするどい。


 ◇ ◇ ◇


「そんなわけで、白井さんに二人の関係バレちゃった」


 翌日、課長とデートした後に課長の家で夕ご飯を食べおわりソファに座りながらコーヒーを飲んでいるときに、白井さんに付き合っていることがバレたいきさつを話した。


「私との約束断って何してるかと思ったら、白井さんと会ってたのね」

「すみません」

「別に束縛するつもりはないけど、正直に言ってね」


 課長と付き合っているのに別の女性と二人で会うことに疚しさを感じて、課長には内緒にしていた。


「で、どうする。白井さんにバレたと事で、職場でオープンにしてちゃう?いっそ籍も入れちゃう?」

「えっ、それは、まだ・・・」

「冗談よ。焦ってる、あさひ可愛い」


 課長がそっと肩に手を回した後、唇を近づけてきた。課長と結婚。考えたこともなかったけど、優しく体を撫でてくれる課長とずっと一緒にいたいと思ったその時、お尻から心地よい刺激が伝わってきた。


 ◇ ◇ ◇


 それから1か月後、仕事を終え帰ろうとしているときに白井さんに呼び止められた。


「朝日、今日飲みいかない?」

「いいけど、彼氏は大丈夫?」

「そのことなんだけどね」


 落ち込んでそうな彼女をみて、この前のアドバイスがまずかったかなと思い、一緒に飲みに行くことにして、何回か行ったことのある居酒屋に入った。ここなら個室に別れているので、周りを気にすることはない。


「ごめん、なにか変なこと言った?」


 ビールとお通しが届いたところで、乾杯もそこそこに聞いてみた。


「うんうん、あの時の服着ていったら、彼氏もいつもと違ってかわいいって、褒めてくれた。でも、もう遅かったみたい」

「遅いって」

「二股かけられてた。先週もデートの約束だったんだけど、ドタキャンされたんで一人でブラブラしていたら、彼と別の女が手をつないで歩いているのがみえちゃった」


 そう話し始めた、彼女の眼には涙が浮かんでいた。


「それでね、彼にそのことを言ったら、彼女の方が本命だって言われて振られちゃった」


 そこまで言うとビールを一気に飲み干して、お代わりを注文した。そのあとも彼氏の愚痴を言いながら、白井さんはハイピッチでグラスを重ねていった。



 ◇ ◇ ◇


「大丈夫?お水いる?」

「ありがとう。少し楽になった」


 白井さん水の入ったグラスを受け取ると、一気に飲み干した。酔いつぶれてしまった白井さんをそのままにしておくことはできず、一緒にタクシーに乗って帰宅することになってしまった。


「どうする?帰るなら、もう一度タクシー呼ぶけど?」

「お金ないから、良かったら泊めてくれない?」


 白井さんが甘えた声でお願いしてきた。経理担当として彼女の給料も知っているので、タクシー代が彼女にとって負担になる気持ちは十分に理解できる。

 結局、断り切れずに泊めてしまうことになってしまった。


「それじゃ、寝る前にお風呂入ろうか?沸かしてくるね」


 そう言って立ち上がろうとした、白井さんに手を引っ張られそのまま押し倒された。水泳でインターハイにいったのが自慢の彼女の力は、学生時代陰キャラだった自分より強く、抵抗できずに押し倒されてしまった。


「最近、彼氏とご無沙汰なの」


 そういいながら、白井さんはスカートをめくった。こんな時、スカートだと脱がす必要がなく便利だなと妙に感心している間に、タイツと下着も下げられてしまった。

 課長のことが真っ先に頭に浮かんだが、その罪悪感がかえって興奮を誘ってしまい、下半身の血流が良くなってきた。

 上に載っている白井さんの顔が、悦びに見ているのが見えた。自分の体にも次第に気持ちいいよい刺激がおとずれてきたところで、意識を失った。




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