Who are you ?
──意識が戻る。
真っ白な天井。顔だけを動かして辺りを見回すと点滴らしいものと、何かの機器が見える。上半身を起こそうとするが、痛みが走りそれは叶わない。
やがて、一人の女性がやってきた。僕と目が合うなり慌てた様子で走り去っていく。程なくして、白衣を来た眼鏡姿の中年男性が現れた。
「気分はどうかね?」
「ぅ、ぁ……」
「ふむ、先程目覚めたばかりなのだから声はまだ出んか」
僕は二週間の間、目を覚まさなかったらしい。
それから、概要を聞いた。
閑静な住宅街で起きた、火災と爆発。崩れた瓦礫の中から、僕は救出されたらしい。体の各所が折れていたものの、瓦礫に守られる形で奇跡的に火傷は軽度で済んだらしい。それ次第では、助かる見込みはなかった。
それでも、全身の怪我によって数ヶ月は入院が必要なようだった。また、右目については、完全に機能を失っているようだ。メスで切り開かれたのだから、それは元々諦めていた。
「それと他に二人居たんだが、一人はその場で死亡が確認されたよ」
「ひと、り……」
──そう、ひとり。では、もう一人は?
どうなったのか。そして、どちらなのか。いや、考えることに意味などないのかも知れない。
それから数時間ほどして、警察が現れた。事情聴取ということだった。男性医師は難色を示す。
「今日目覚めたばかりで、声も上手く出ません。後日にしていただけませんか?」
「申し訳ないですが、これも職務ですので」
あまり喋れないこともあり、その日は簡単に質問をされた程度で終わった。警察としては、火災と家の崩壊に巻き込まれただけでは説明することが出来ない怪我が幾つもあったことが一番の焦点らしい。
「ああ、そうでした。犯行に関わったとされる二人組は、逃走途中に事故を起こしてましてね。そして、一人はその場で死亡が確認されています」
──ひとりは、死亡。では、もう一人は?
警察が帰って行ったあと、僕は簡単にレントゲンなど検査を受けてから再び病室へと戻った。外を眺める。今にも雨が降りそうな曇天だった。
僕は、正しかったのだろうか。
それとも、間違っていたのだろうか。
僕は、目的のために正しい判断が出来たのだろうか。
看護師が、僕の血圧と脈拍を測っている。
──不意に、病室にノックの音が響いた。
大きな溜め息が漏れるのが聞こえる。
「またですか。目が覚めていなくても、貴方を一目見たいってずっと言っている方がいて……。恐らく目が覚めたのを聞いたんでしょうね……。当然、面会謝絶なので何度も断ってるんですが、一度だけでもってすっごくうるさいんです。その方も、まだまともに動ける状態ではないのに、いくら説得しても聞かなくて……。ごめんなさい、一度だけでも会ってくれる?」
看護師は、苦笑いを浮かべる。
「あ、あ……」
声が、出ない。
頭の中が真っ白になった。
両親は、もういない。
親戚付き合いも、ない。
だとしたら。
だとしたら。
扉の先にいるのは。
一体。
ゆっくりと、病室のドアは開いていった。
<了>
__________________________
最後までお読みいただきありがとうございました。本作品がお気に召しましたら、応援やコメント、☆評価をいただけると幸いです。次回作へのモチベーションに繋がります。
さて、因みに生き残ったのは誰かと聞かれても、作者も分かりません。決めていません。
ただ、作中最も狂っている人物なのではないでしょうか。
この世界は、残酷なのですから。
皆様にとって、一番狂っていたのは誰でしょうか?
それでは、機会がありましたら、また。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます