第45話 責任問題
階下に降りると、広間で飯を食っていた由良が近づいてきた。
「トキジクさん、春日なら外の中庭に居ますよ」
「あ、そう。わかった」
「それと・・・」
「ん?」
「春日をあんまり泣かせないで下さいね。あんな奴でも、僕は一応親友やってますんで」
そういって宇良は俺の手に触れようとした。
俺はゾッとして手を引っ込めた。
怖っ、この子怖っ。流石はマグナス卿んっちの子‼
今その手で生命力減退しようとしたよね!?
「そうだぞ、トキジク。春日君、泣かせたらいかん」
卓について飯食いながら、玄女がいった。
「そうそう!」
ついでに稲妻小僧もなにか口に頬張りながら適当に合いの手を入れてきた。
っったく、愛されてんな~、春日の奴。しかし過保護過ぎやしませんか?
「へいへい、ちょっくら慰めてきますよぉ」
俺は広間の中の奴らに手を振って、中庭に出た。
春日はさっきまで俺が座っていた水盤の横の椅子に、膝を抱えて載っていた。
滅茶苦茶拗ねてんじゃねーか。
「よう」
向かいの椅子に、俺は腰掛けた。
春日から返事は返ってこない。抱えた膝に顔を埋めて、表情はわからない。
「おい、春日、どうしたんだよ」
そう訊いてからしばらく経って、春日はなにやらぼそぼそ呟いた。
「は? なんて?」
「・・・さっき、二人でなにしてたんすか」
「あ? なにしてたって・・・」
いきなり直球だな。
「あの変な外国人となにしてたんすか⁉」
突然顔を上げて声を張り上げてきた。
「な、なんだよいきなり。ていうか泣いてんのか? おまえ」
「はぁ? バカじゃないすかオレのどこが泣いてるんすか目ぇ節穴過ぎるっすよそんなだからなににもわかってないんすよいったいなに見てるんすかなんにも見えてないでしょ‼」
う、うぉい、随分暴発してるじゃねーか。
まったく。
「すまねーな、春日。大人になれよ」
俺は春日の頭に手を置いた。
「ば、バカにすん・・・」
「お前が! ちゃんと大人になるの待っててやるから。話はそれからだ」
「そ、それって、どういう・・・」
「俺は、死なねーし、どこにも行かねーし。だから安心して、ゆっくり大人になれ。お前にとっちゃ今が一番大事な時期なんだぞ。焦ることはねぇ。いろんなもの見て、なんでもやってみて、あれこれ経験してみろ。良いことも悪いことも、味わってさ」
「やっぱりオレがまだ子供だってことだろ。誤魔化してんじゃねーの?」
「違ぇーよ馬鹿。物事にはタイミングってもんがあるんだよ。なんでもヤルには絶好の機会があるんだ。それを逃すな。テメェのやることにテメェで責任が持てる、そういう時が必ず来る。そしたら俺にぶつかって来い」
「一番無責任な師匠がなにいってんだよ」
「無責任も責任の取り方の一つだ」
「なんだそりゃ、また屁理屈いってらぁ」
俺は春日と額同士をくっ付けた。
「だから、これからも頼むぜ、馬鹿弟子」
「しゃ、しゃーねーな。わかったよバカ師匠」
春日は月明かりの下でもわかる位に顔を赤く染め、熱っぽく答えた。
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