第35話 死の天使
まずもって、その存在は正に美しかった。
銀色の波打つ髪。真珠のように不思議な光沢のある肌。額に生える深紅の角。そして白金に輝く背に生えた翼。端正な顔立ち、均整の取れた体。性器らしきものは見当たらないが、男でも女でもない、その両方の魅力を持ち合わせた、いうなれば両性具有の雰囲気。
これは、まるで・・・
「天使だ」
宇良が、心の声が漏れ出てしまったように呟いた。
天使? まさかそんなものが。いやしかし、悪魔が居るなら天使が存在していてもおかしくはないか。それでも、天使とは・・・。どうしてもその存在を受け入れられない俺がいる。天使が居るなら、その先には・・・。
『早くここから立ち去れ! さもないと』
いきなりクロウリーが俺を突き飛ばした。
『は? だって』
『早く皆を連れて逃げろ。ここは、いやこの島国すら危ない』
『そんなことなら、どこに逃げても一緒だろ⁉ そもそもいったいなにがどうなってんだ⁉』
『あれは、かつて、すべてを巻き込んだ、戦争が、説明してる暇がない、早く』
その瞬間、銀色の存在が、指から光の筋を放った。
同時に春日が短い悲鳴を上げた。
「うわっ」
光の筋は、辛うじて春日の拒絶で弾かれ散逸した。
アイツ、攻撃したのか⁉
『この際アイツがなんなのかなんてどうでもいい。攻撃してくるんなら、ヤルしかねーだろ』
俺はクロウリーにいった。
とはいうものの、あいつに、まったく勝てる気がしねーな。しかし、それでも、引き下がる訳にはいかない。せめて子供たちを逃がさなきゃ。
『やいやい銀色野郎‼ テメェの相手は俺だ‼』
そう叫んで大袈裟に銃を向けた。
『よせ‼』
クロウリーが俺の体を押した。
その瞬間、例の光線が俺の左目を貫いた。
「ぐわぉぉぉ」
激痛で思わず左目を手で押さえる。
畜生‼ 確実に眉間を狙ってきやがった‼
『ナンダオマエハ』
銀色天使はおかしな発音で言葉を話した。いや、話したのか? よくわからない。もしかしたら直接頭に声が聞こえたのかもしれない。
「なんだじゃねーよ、テメェこそなんなんだよ糞がぁ‼」
俺は残弾すべて銀色天使にブチ込んだ。しかし当たるどころか、弾丸が途中で消滅しやがった。
無表情過ぎて端正な相貌が不気味に見える銀色天使は、なんの躊躇も無く人差し指をこちらに向け、再び光線を発射した。
こんなもん、避けられたもんじゃねーや。
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