第34話  顕現


『グギャァァァ』    


 四本の剣に体を刺し貫かれ、蒼い炎でその体と精神を焼かれ、苦悶の叫びを上げる鬼メタモン。


『ち、力を、もっと力をぉぉぉぉ』


 鬼メタモンの右手が虚空を掴む。その指には、ソロモンの指輪が不穏に光っていた。


『ソロモンの指輪は、それを嵌める者の欲望に応じて、異界から精神体、いわゆる悪魔とも呼ばれる存在を引き寄せ、憑依させるものなんだ』


 クロウリーが側に来て語った。


『そのわざは至極強力。だから、早くとどめを』

『いや、とどめっていわれても、もう術は完遂してるから、後は・・・』

『ならば僕が』

『いや待て待て! 今なんかしたら中途半端に!』


 滅魔の剣で串刺しになっている鬼メタモンのところに行こうとするクロウリーを必死で止めているその時、虚空へ伸ばした腕の先でソロモンの指輪の輝きが急激に増していった。


『おい、なんだありゃ!』

『まさか、もう・・・』


 指輪の光が、鬼メタモンを包み込んでいく。


『もっと・・・力、を』


 ひと際光が増して、これはマズいと思った瞬間、記憶が飛んだ。




 ん・・・・、なにが起きた?



 気が付けば、地面に倒れていた。起き上がると土埃まみれなのに気付く。

 周囲は、木材や瓦やガラクタが散乱していた。


「師匠‼」


 春日の叫び声が聞こえた。

 建物が軒並みえぐられた様に崩壊し、周辺が更地のようになっていた。

 爆発? そういや、鬼メタモンが・・・。


『師匠‼』


 再び春日の声がした。

 見れば春日の拒絶の異能で、この爆発があったような状況で、玄女と宇良と稲妻小僧は無事だったようだ。

 そして問題なのは。


「ありゃ、いったいなんだ?」


 思わず呟いてしまう。

 この惨憺たる惨状の中心に、異様な存在が月明かりの下、浮遊していた。

 銀色の波打つ長髪に、白銀に輝く引き締まった裸体の男。

 額には像の牙の如き深紅の角が二本、反り立っていた。

 そしてなによりも、その背中には、美しい銀色の翼があった。

 あれが、メタモン、だったモノ、なのか?


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