第33話  切り札

「なんだよ、化け物になっちまった」


 角を生やし腕が四本になった元メタモンを見て、春日は茫然とそう漏らした。

 憑依から、本格的に受肉し始めやがったな。

 俺の助手をやってるとはいえ、春日でも少々怯えているようだ、無理も無い。

 爆発の中から出てきた矢先、腕の一本を伸ばしてうずくまる玄女を掴もうとするが、間一髪、稲妻小僧が玄女を抱きかかえて回避した。


「うあっ」


 しかし僅かに掠めたらしく、稲妻小僧の背中に引っ掻き傷が出来た。


「クソッ、宇良君、稲妻小僧の傷を頼む! 春日はその支援を!」

「ハイ!」

「お、おう。任せろ!」


 二人は稲妻小僧と玄女のところに駆け寄る。


「よう、随分ハイカラな姿になったじゃねーか。そんなお洒落さんの相手は俺だ」


 俺は右手のピースメーカーで早撃ち三連射を放った。

 鬼メタモンは銃弾を受けても気にせず、四本の腕すべてを槍のように突き伸ばしてきた。


「うおっ」


 だが残念、俺はただ黙って手首くっ付けてただけじゃねーんだよ。その間に左手で取り寄せた術式をいろいろ張り巡らせておいたんでぃ。

 その準備しておいた術式の一つ、攻撃を自動で防御する術が発動し、四本の手を寸前で防ぎ止めた。そこでもう一発結界無効の銃弾を撃ち、鬼メタモンの左目をブチ抜いた。


『ギャャャ』


 流石に仰け反って苦悶する元メタモン。

 この機を逃さず、俺は四枚の呪符を放ち、更に術式が描かれた古い羊皮紙を手元に物質転送した。とっておきの術をお見舞いしてやるぜ。


『我、契約に基づき、テトラモルフの燃える剣を召喚せり!』


 術を発動させると、四本の燃え上がる剣が、鬼メタモンを四方から囲むように出現した。


『契約を速やかに履行せよ!』


 四本の剣は同時に元メタモンの体を刺し貫いた。


『ギャァァァァ』


 聞くに堪えない断末魔の叫び声を上げる鬼メタモン。

 これはこの世のモノではない、正に魔の物を浄化滅する為の、古から伝わる術だ。

 こんなものが存在するということは、ずっと昔から、魔の物はこの世界に侵入を繰り返してきたんだろう。

 しかしこれで終わりだ、名も知らぬ悪魔。もう二度とこっちの世界に来るな。


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