第26話 不老不死探偵の助手 其の拾弐
玄女と布頭黒髭男はしばらく睨み合った後、ほぼ同時に格闘が始まった。
殴ったり蹴ったり組んだり離れたり払ったり受けたりと、目にも止まらない速さでの応酬。そして遂に大通りに飛び出し、再び距離を置いて対峙した。
術師ってのは術で動きや力を増強出来るから、ちゃんとした格闘技や戦闘訓練なんてものを修めている奴は少ない。術に頼って、そういったものを疎かにする。そもそも術の修行だけでも大変なので、肉体訓練をしている余裕がない。
だから、ちゃんと術を使える上に、肉体の鍛錬が達人なのは、とんでもなく恐ろしい存在なんだ。
そして、おそらくその領域に達しているのが、今目の前で戦っている二人、玄女と布頭男だ。
『今数度の手合わせでわかるぞ、お前は相当の実力者だ』
布巻男はどこか嬉しそうに笑った。
『だからさっきから指摘してるじゃないか、いってることが一言もわからないと』
今度は玄女から仕掛けた。
一瞬で間合いを詰め、雷を纏った拳で殴り掛かる。
あの移動法は“禹歩”というらしい。特別な歩調の効果で、素早く動いたり、攻撃や防御にも役立つらしい。
しかし布頭男は雷の拳を寸前で払い除け、代わりの口から紅蓮の劫火を玄女目がけて噴き出した。
玄女は避ける暇も無く、燃え盛る炎をまともに喰らった。
夜の街の通りが赤々と染め上げられ、玄女の体が火だるまの如く炎に包まれる。
「玄女!」
思わず悲鳴にも似た声を上げてしまう。
しかし燃え盛る玄女の体は幾枚もの札のような紙切れに変わり、地面に崩れ落ちる。
身代わり?
布頭男がハッとして頭上を見る。
上空から雷火に包まれた玄女が叫びながら布頭男目がけて落下してきた。
『金剛指、轟雷‼』
玄女が殴り掛かり、拳が直撃するその刹那、強烈な閃光と爆音に襲われた。
オレを含め、周囲にいた人々は吹き飛ばされ、ガラスが割れる音、瓦が落ちる音が響き、土煙が舞い上がった。
まるで砲撃を受けたみたいだ。
いったいなにが起きた⁉
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