第17話  不老不死探偵の助手 其の六

 隣に座る宇良が、顔を寄せて囁いてきた。


「なんかさっきから、あそこに居る白人たち、こっちを気にしてる風なんだけど」

「ああ、オレも丁度気になってたところだぜ」


 奥の席に居る白人、全部で六人。変わったやたらフリフリがついた白いシャツに黒ズボンの集団。

 オレがそちらを向くと、全員一斉に視線を逸らした。


「なぁ、稲妻小僧。あそこの白人の客たち、知った顔か?」

「え? う~ん、いや。知らないな。オイラは行きずりの客以外の顔はちゃんと覚えている主義でね」

「客って、物をくすねた相手のことだろ」


 たく、こいつは物を盗ることしか考えてねーのかよ。でも、指輪とは関係ない奴等なのかな、あの白人たちは。


「なんだどうした? あの白人たちがからなんか盗ってきて欲しいのか?」


 ・・・ふん、それもアリかな?


「ねぇ、ここは華僑街だし、相手は西洋人だ。ここは慎重に行こうよ」


 宇良がなにか作戦を提案しようとした。

 いや、ここは先手必勝。守りに入ったらいけねぇな。それが師匠の教えだ。


「よ~し、ちょっくら話つけてくらぁ」


 オレは立ち上がり、軽く稲妻小僧の耳打ちしてから、宇良が引き留めるのも聞かず白人集団の席へ向かった。


「ハローハロー今晩は、白人の旦那方。この国はどうですか? 気に入ったかい?」

 白人の旦那方は皆黙って厳しい目をこちらに向ける。

「あれ~、どうしたんすか? みんなだんまりで。長旅の疲れでもうお眠ですか?」

 一人が通訳と思われる東洋人の男を見る。

「通訳のおっちゃん、構わないぜ、ちゃんと訳してくれよ。探し物の指輪は見つかったかい? ってさ」


 通訳の東洋人が戸惑いながら、オレのいったことを通訳する。

 オレは横目に、白人のテーブルの背後から稲妻小僧が近づくのを見た。

 そうだ。オレが注意を惹いている間に、ちょいと悪戯してやれ。

 すると一人の体格のいい中年白人が威厳を持って立ち上がった。


『指輪だと? やはりお前たちはあの指輪のことを知っているようだな』


 え? どうやっても異国の言葉を喋っているのに、頭の中では理解できる。

 まさか、これもなんらなの術なのか?


『コソ泥が立ち寄っている国は、やはり国民も下賤なコソ泥ばかりなのか? こんな子供までもが犯罪者とは』


 ハッと気付くと、テーブルの後方から、稲妻小僧の声が聞こえてきた。


「いでででで、放せ、放せよ。痛ぇだろ!」


 白人の一人に、腕を掴まれ捩じ上げられている稲妻小僧。

 あいつ、しくじりやがった。


『まったく、東洋の子猿には躾が必要だな』


 口髭を蓄えた体格のいい白人男が、ニヤリと笑みを浮かべた。

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