第9話  不老不死探偵の助手 其の弐

「すみません、今日は定休日だそうで・・・って、あれ?」


 骨董屋の入り口から、宇良の戸惑う声が聞こえてきた。


「どうした?」

 ようやく朝粥を平らげたオレは、奥の厨から店の方へ顔を出した。

「誰が来たんだ?」


「いや、確かに誰かが戸を叩いていたし、人影が見えたんだけど、開けたら誰も居なかった」

「悪戯か? まったく。こんな店に、物好きもいたもんだ」

「おかしいな・・・」


 不満げに首を傾げる宇良。


「ま、いいだろ。オレ、出かける準備してくるよ」


 表の戸を閉めて、オレは二階へ上がろうと店の奥に行こうとした。


「あいや待たれよ!」


 いきなり店の奥から声がした。


「うわっ」


 オレと春日は驚きの声を上げ、身を寄せ合った。


「出かける前に、訊きたいことがある」


 店の奥には誰も居ないはずだった。

 だいたい、さっきまでオレが居たんだから。


「誰だ!」


 オレは思い切り啖呵を切った。

 薄暗い厨の方から、現れたのは、学生服を着た男、歳はオレや宇良よりちょっと上くらい。そして、顔がやけに凛々しい。整った形の眉、愛嬌のある眼差し、スッキリとした口、鼻。


「やぁ、諸君、今、オイラの噂話をしていたね?」


「は?」


 宇良が思わず声を漏らす。


「だから、誰なんだ、お前は」


 こいついつの間に中に這入りやがった。全然気付かなかった。


「正に、正に! 諸君が今噂話に花を咲かせていた当の本人、稲妻小僧その人さ!」

「えええ‼ 本当かよ‼」


 オレは思わず感嘆の声を上げてしまった。


「早っ、もう信じちゃってんの?」


 宇良が呆れた目を向けてくる。


「バカ、だって見たろ⁉ まったく気付かれずに店の奥にもういたぜ⁉」

「そう、流石だね、良くわかってる」


 今度は一瞬で店の表口の前に移動していた。


「う、速い・・・」


 宇良が渋い顔をした。


「信じてくれたかな? オイラが稲妻小僧だってことを」


 そういって爽やかな笑みを浮かべた。


「その稲妻小僧さんが、ここに何の用で?」


 まだ疑念を拭いきれていないような宇良が訊いた。


「実はさ、落とし物を探してるんだよね」



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