閉じた蕾
「またここに居たんだ?」
再び幻聴が聞こえて、顔を上げれば、朝比奈が笑みを浮かべて立っていた。
どうやら、今度は幻聴なんかじゃなかったようだ。
つくづく、物好きな奴がいるもんだと呆れてしまう。
朝比奈獅子という男は人懐こくって、いつも笑顔で、ちょっと天然な所があって……そんな絵に描いたような誰からも好かれるようなタイプだ。
転入して間もないというのに、いつも朝比奈の周りは沢山の人で溢れている。
そんな皆に愛されるべき人間がいくら昔馴染みとはいえ、こんな人の輪から外れたような奴をわざわざ相手にしたがる意味が分からなかった。
私自身、元同級生だったと聞いても、言われてみればそんな子居たかも? ……くらいの記憶の範疇でしかないのに。
彼はいったい何を求めて、何を選びたがっているのだろう?
私達は毎日雑音と雑踏の中で生きているけれど。
己の手で選び取ったものをがらくたにするか宝物にするのかは個人の自由で、また何を選んでも自由だと言うのなら……。
何故、孤独を選ぶ事だけは咎められなきゃならないのか?
「うざい」
だから、私は今日も毒を吐く。
孤独を選び取るために。
誰にも邪魔をされないために。
ーーーもう誰も、傷付けないために。
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