閉じた蕾
「ひなっち、何かやりたいことあるなら言っちゃえば?」
朝比奈だからひなっちねと、高山さんからざっくばらんなニックネームを貰った。
「うちらは特にやりたいことがないだけで、希望があるなら、ちゃんと言えば部長も聞いてくれるよ」
桜花ちゃんがじっとこちらを見て、言いたいことがあるなら早く言えと無言で促してくる。
「えっとじゃあ、皆でUFO召喚するとかどう?」
僕は半ば圧されるままに思いついたアイディアを吐き出した。
「却下」
しかし、すかさず駄目出しを喰らった。解せん。
「ひ、ひなっち、UFOって……」
何がおかしいのか、堪えきれずに高山さんが吹き出す。
「え、もしかして体験済みだった?」
「いやー? 違うけど、大真面目な顔で急に何言い出すのかなって」
「だって格好良くない? 皆で円陣組んでベントラベントラ〜〜とか言うの」
「……ダサッ」
僕の願望は
これぞクリティカルヒット。ゲームで例えるなら、僕は序盤で登場して一瞬で蹴散らされる雑魚キャラだ。
しかも、よくよく話を聞くと超常現象は研究しないらしい。おかしい。ここは、超常現象(及び心霊)研究部なのに。
「じゃあじゃあ、心霊スポットに行ってみるとかは? これこそ心霊研究部っぽくない?」
「……行かない。取り憑かれるし」
負けじと食い下がる僕に、桜花ちゃんがサラッととんでもないことを告げる。
「え?」
(今、取り憑かれるって聞こえたような?)
「部長は本物だからね〜」
高山さんが補足になっていない補足を付け足した。
「……ねぇ、今のって……」
説明を求めて桜花ちゃんを見た。
しかし、希望届けの受付は終了したらしく、彼女はお得意の澄まし顔で書籍に目を落としているから、その真意は僕には読み取れそうにない。
隅野くんはともかく、お喋り好きそうな高山さんでさえ、彼女に倣うように沈黙し始めた。
「……マジで?」
心なしか部屋の温度が下がったような気がした。
なれど。
「……ぷっ」
一番に静寂を破ったのは桜花ちゃんだった。
彼女は、突如吹き出したかと思えば、腹を抱えて盛大に笑い始めた。
そんな滅多にない光景を今まで以上にぽかんと間抜けな顔で見つめる僕。
「冗談に決まってるじゃん。何信じてんの、このバカ」
(……ごめん、和泉。僕、やっぱり、Mなのかもしれない)
軽く罵りながら見せた彼女の屈託のない笑顔に、僕の心臓はとくんと跳ねた。
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