閉じた蕾
「いやぁ、ごめんね! 驚かせて」
ちょんまげの少女は高山レイと名乗った。
「入部希望者はなかなかいないし、仮に入っても何故かすぐ辞めちゃうからさぁ……ついつい張り切っちゃった」
高山さんがてへッとひょうきんに舌を出す。
それにウンウンと高速で頷く隅野くん。眼鏡が半分以上ずり落ちていて眼鏡の意味を成していない。ホラーの次はコントが始まるのか?
(絶対君たちの歓迎の仕方が問題だよね。何で気付かないの……とはさすがに言えない獅子であった)
「ねぇ、どうしたの? やけに騒がしいけど」
「あ、部長! やったよー! 念願の入部希望者だよ!」
「そうなの? 良かったじゃ……」
遅れて部屋に入って来た桜花ちゃんが僕を見つけた瞬間、心底げんなりした
「……何でいんの」
「い、和泉に教えて貰って」
「あいつ……」
ちっ。と鬼のような形相で舌打ちされた。普通に怖い。思わず漏らしてしまいそうなくらいに。
……多分これも、口が裂けても直接言葉には出来ないよな。
「ほんと、いつまで付きまとってくるつもり?」
仁王立ちで両腕を組んだ桜花ちゃんが、身体を縮こまらせて椅子に座る僕を見下ろした。
数年ぶりに再会したかつての友人は、何らかの事情で心を閉ざしていた。
また以前のようにお互いに笑い会える関係に戻りたいのだけれど、彼女は誰ともその関係性を望んでいないみたいで。
独りが好き。事あるごとにそんな拒絶を振りかざしては、はっきりと他人の線引きをしてくる。
「い、嫌だって言われるまで何度でも」
「もう何遍もそう言ったけど?」
「でも、それ本気じゃないよね」
「……」
一か八かで核心をついたら、苦虫をかみ潰したような表情をされた。
やはり、和泉が言っていたみたいな人間が嫌いだからって理由ではなさそうだ。
当たり前のようにスルーされるし、言葉こそ掛けられることはないが、彼女にとってのそれはポーズみたいなものなのだろう。
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