第39話 女神

なんとか耐えた……!)



 つかの間の休息。



 4時間目の授業をなんとか寝ずに受けた俺は、妙な達成感を味わいながら食堂に流れていた。



「てか人多っ!」



 授業が終わってトイレに寄ってから来たのだが、予想以上に食堂が混んでいた。



 それもそのはず。昨日の昼休憩は他のクラスとは違う時間帯だったので、A組の貸し切り状態だったが今日は他のクラスの生徒もいる。



「席が空いてないな……待つべきか?」


 


「おーい!グレンくーん!」



「ん?」



 俺を呼ぶ声の方へ向くと、そこには既に席に座ってこちらへ手を振ってくるカレナと、いつの間に仲良くなったのか、控えめに手を振ってくるニアの姿があった。



 2人が一緒にいるのは意外だったが、とりあえず呼ばれたので人混みを掻き分けて2人の元へ歩いた。



「ここ、一緒に座ろ?席無くて困ってたんでしょ?」



 カレナが自分の隣の席をトントン叩いて俺を誘ってくれた。途方に暮れていた中でこの優しさは俺の心に響く。



「女神だ……」



「ん?」



 いかんいかん、席を分けてくれたカレナの優しさが身に染みて思わず本音が出てしまった。



「いや何でもない。ていうか、カレナとニアはいつの間に仲良くなったんだ?」



「実は昨日の放課後、流行りのケーキ屋さんに一緒に行ったんだよ。ね、ニアちゃん?」



「う、うん、すごく美味しかった。今度はグレンくんも一緒に行かない?」



「お?おう……」



 女子の交流の早さに若干引いた。え?こんなに女子って友達作るの早いのか?それとも女子だけじゃなくて男子もこんな感じなのか?



「カザガネでも誘うべきだったか……」



 クラスの男子で一番交流があるのはカザガネだが、友達と呼べるほど親しい関係というわけでもない。まずお互いのことをほとんど知らないし。



「あー……カザガネくんも誘ってみたんだけど、断られたんだよね……『仮面の下を見せるのは俺が信頼した相手だけだ』って言われちゃった」



「なんか、仮面の外からでも分かるくらい不機嫌だったよね……」



「あいつ……」 



 カザガネのやつ、悪いやつではないんだろうけど、仮面をつけている影響かいまいちキャラが掴めないのが難しいところだ。



「まあ、仮面族としてのプライドもあるんだろうし、仕方ないよ」



「そんなもんかな……」



「まあ、とりあえず何か食べようよ。私とニアちゃんはもう選んでるからさ。ほらグレンくん、どれにする?」



「だな……」



 そんなこんなで席を確保できた俺は、適当にメニューを選び、しばらく3人で談笑することとなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る