第37話 グレンの選択

 選択授業を2つ。何を選ぶかによって今後の学園生活での評価点が大きく変わる。



 渡された用紙を見てみると色々と種類がある。あるのは各属性の魔法座学や魔法実技、魔術理論、その他には剣術や槍術などの魔法関連以外の授業もそこそこ。



 成績を優先するなら得意な剣術を取るべきだろうか。



 俺が迷っている中、みんな案外すらすらと記入しているようで、気になって周りの生徒たちの用紙をチラチラ伺ってみた。だが、俺の前の段に席があるカレナとカザガネは角度的に見えない。



 なので、仕方なく隣にいるグレースの用紙を盗み見る。あまり誉められたことでないのは承知しているのだが、あくまで参考のためだ。やむを得ない。



「……!」



 おそらく、氷魔法関連の授業を選択しているのだろうと思っていた俺の予想に反してグレースの選んだ授業は実に意外だった。



 ―――――剣術。



 グレースが選んでいた授業は剣術だった。選べる授業は最大で2つ。もう一つの方を見てみると魔術理論と書かれていた。こちらの授業はいかにもグレースらしい雰囲気だ。



(グレースが剣術か……。意外っちゃ意外だけど、試験の時は細剣を握っていたが、)



 もう一つ選んでいたのが魔術理論なのは、すでに氷魔法が十分以上に仕上がっているからなのかもしれない。



 グレースの選択授業を見て、俺は受けたい授業を決めた。グレースは多分、自分に足りているものと足りていないものを把握していて、どの授業を受ければ実力を向上させられるのか理解しているのだ。



 グレースの回答を見て思い出した。学園に入ったのはミネンとの約束があるからだが、その約束をしたのは、俺の村を壊滅させた魔族を倒すためじゃないか。



「……よし」



 退学にならないように成績を上げるのも大事だが、それ以前に俺は、この学園で強くならなければいけないのだ。



 ※ ※ ※



 HRが終わり、用紙への記入を終えた俺の所にカレナがやって来た。



「グレンくん、炎魔法の授業にしたんだね。私も一緒だよ!」



「え?カレナも?」



 カレナは手元に持っている用紙をこちらへ見せてきた。確かにカレナが選んでいたのは、確かに俺と同じ授業だった。



「カレナって4属性だったよな?他の属性は?」



「4つの中で炎が一番苦手だし、4つは選べなかったから仕方なくねー。でも、グレンくんが一緒なら良かったよ」



 そう言ってカレナはにこやかに微笑んだ。まあ、知っている人が1人でもいるなら心強い。



 カレナとは、これから長い付き合いになりそうだ。

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