第33話 ギルへの違和感
「お前、順位いくつだ?人のこと馬鹿にできるんだからさぞ高いんだろうな?」
「7位だよ……!クソ痛え……馬鹿みたいにぶっ飛ばしやがって」
本当に結構上の順位でびっくりした。それもそうだ。水魔法の技術だけなら騎士団候補生ともやり合えそうなニアを下しているんだ。下位の人間の訳がない。
結界の外までぶっ飛ばしたので、ギルは全身砂まみれになって戻ってきた。顔からは所々切り傷があり、血が出ている。
「……悪い、ちょっとやりすぎた」
「同情なんてすんな……俺の力が及ばなかった結果がこれなら、文句はねえ……あと、色々言って悪かった」
そう言ってギルは頭を下げた。
何か悪口でも言われるのかと思っていたが、出てきた言葉は想像以上に誠実なものだった。
ギルは俺にそれだけ言って、肩を庇いながらニアの方に向かって歩いていった。
「え……あ、えっと」
突然迫ってくるものだから、ニアもなんだか困惑した様子だった。
「……悪かった」
そう言って、ギルはニアにも頭を下げた。
「お……?」
「え?」
先程のようにギルの口から出たのは、今までのような嫌味ったらしい悪口ではなく、ニアに対する謝罪の言葉だった。
「あいつに負けて、少しだけ冷静になった。今まで弱いだとか馬鹿にして悪かった。……そんだけだ」
「あ……」
ギルはそう言い残して、ニアの元を去った。
なんでまた急に謝罪を……?さっきまで俺らを馬鹿にしてたギルとはまるで別人のようだった。
「グレンくん、お疲れ様」
ギルに違和感を感じていると、ニアがこちらへ駆け寄ってきた。
「ああ、なんか謝ってもらえたな、あいつに」
「うん。なんだか別人みたいで困惑しちゃったけど……」
やっぱりニアもおかしいと思っているみたいだ。勝負する前のあいつは、他人を見下すことしか考えないようなやつだったのに、それが勝負に負けた途端、この変わりようだ。
絶対におかしい。
「えっと、ありがとね?グレンくん……」
「ん?」
ニアは急に改まって、俺にお礼の言葉をくれた。
「自信を無くしてた私を助けてくれて、本当にありがとう。まだちょっと自分に自信は持てないけど、私を信じてくれたグレンくんを信じて頑張る!」
「ああ、頑張ろうな。お互いに」
「うん!」
こうして、俺たちの総合能力テストは終了し、気づけば放課後になっていた。
※ ※ ※
放課前のHRは無く、テストが終わったその場で解散となった。
テスト終わりに、ヤバめの腹痛に見舞われた俺は1人トイレに籠っていたのだが、俺が更衣室に入った時にはもう誰もいなかった。みんな帰るのが早い。
1人教室で帰る準備をしていると、いきなり教室の扉が開いた。そこには、未だに見慣れない魔法使いの帽子を被った先生がいた。
「いたいた。グレンくん、さっきのギルくんとの模擬戦について話を聞きたいんだけど、時間は空いてるかしら?」
「あー、はい」
これはもしや、ギルと勝手に模擬戦をしたことに対しての説教なのではと、頭の中で覚悟した。
他のクラスメイトにはあまり見られていなかったが、そこはやっぱり先生なのか、俺とギルが勝負したことを知っているようだった。
「ありがとう。立って話すのもなんだし、座って?」
「はい……」
これからされるであろう説教の内容を想像しながら、俺は自分の席へ弱々しく座った。
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