第30話 模擬戦闘試験
先生のからの召集を受けて、俺たちは次の試験の会場に移動した。先ほどの試験会場よりも広く、壁には近接戦闘用の多種多様な武器が立てかけられている。
どうやらここは近接戦闘を鍛えるための修練所らしい。
「それじゃ、最後のテストに移りましょうか。皆は試験の時に使ったと思うけど、最後のテスト『模擬戦闘テスト』では、学園長が創り上げた結界を使います」
学園長の結界魔術。
先生の言う通り、試験の時にお世話になった結界だ。結界の内側で死に至るダメージを受けたとしても、結界が破壊されるだけに留まるので、危険な訓練には必須な魔術と言えるだろう。どういう原理かさっぱりだが。
模擬戦闘テストと言うことは、試験の時のように生徒同士の一騎討ちをさせるつもりだろうか。
「なんとなく察してるかもだけど、ここでは試験の時のように、生徒同士で一騎討ちをやってもらいます。ただし、お互いの評価点を賭けてね」
お互いの評価点を賭ける。
その言葉に、俺の周りにいる生徒たちは動揺した。
「どれだけいい腕を持っていても、実戦で活かせられなければ意味がないでしょう?それに、そろそろクラスメイトに対して対抗心とか生まれて来てるんじゃない?」
皆心当たりがあるのか、目線がそれぞれ気にしている生徒たちへ移った。
ちなみに、俺はクラスメイトに対して対抗心とかないし、なんならお互いの評価点を賭けて戦うことに対して動揺する要素がないし、むしろ嬉しいくらいだ。
「ちなみに対戦相手は、ランキング下位の生徒順にくじ引きを行って決めるわ。今は29人しか居ないから、1人余っちゃうんだけどね~」
そう言って、先生はどこから出したのかくじ引き箱をしゃかしゃか振りながら、俺の前までやって来た。
俺は箱へと手を伸ばした。
今はとにかく評価点が欲しいので、どうかグレース以外でお願いします。今の俺じゃ、まだあいつには敵わないと思うから。
「てい!」
そう願いながら、箱の中にある紙を一枚引っこ抜いた。
「ん?」
引いた紙には何も書かれていなかった。裏表しっかり確認したが、両面真っ白だ。先生の記入ミスだろうか?今までの仕事のでき具合を見る限り、こんなミスをするような人には思えないのだが、これは一体どういうことだろう。
「あ~」
先生は額に手を当て、反応に困っている様子だった。先生の反応でなんとなく俺は察してしまった。
「先生。これってもしかして対戦相手いない感じのパターンですか?」
「みたいね。せっかくグレンくんが評価点を取るチャンスだったのに、なんかごめんね?」
なんで俺先生に同情されてるんだろう。そもそも1人余るって学園のテストとしてどうなんだよ。これは果たしてアリなのだろうか。
「さあ!気を取り直して次行きましょ!ニアちゃん!」
そう言って、先生はニアの方へくじ箱を持っていった。なんか普通に誤魔化してったなあの人。
「ギル・マリクスホード……?」
ニアもくじを引き終えたようだが、くじに書いてある名前に疑問符を浮かべていた。俺も知らないやつだ。
「はっ!俺の対戦相手、騎士団候補生もどきのツレかよ」
ニアのくじの結果を見たのか、赤髪男が近づいてきた、
「嘘……私の対戦相手ってまさか……!」
「そういえば名乗ってなかったな。そのくじに書いてあるギル・マリクスホードは、俺のことだ」
赤髪男、もといギル・マリクスホードはそう名乗り、下劣な笑みを浮かべた。
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