第26話 最下位

 あれから俺たちは、先生たちの説明を受けた後に、様々な能力テストを行った。



 まずは、最初に説明されていた魔力の出力の計測からだった。



 グレースは大きな氷の槌で的をバラバラに粉砕し、続くカレナは水魔法で的を破壊、カザガネ風魔法で的を破壊し、俺以外の騎士団候補生は注目されていた。



 そして俺は、先生に言われた通り拳に炎をエンチャントして的を殴った。イグニス・ヴォルグを使おうとしたら先生に止められたので仕方なく拳を使ったのだ。



 そしてその次は、魔力の放出持続時間の計測だった。これは、体内の魔力をどれだけ長い時間出し続けられるかを計測するものだった。



 先ほど同様、他の騎士団候補生はクラス内でもトップクラスの持続時間を記録し、めちゃくちゃちやほやされていた。



 正直羨ましかったが、残念ながら俺は魔力が少なかったため、持続時間はクラスでも最低の記録を叩きだし、逆に目立ってしまった。



 カレナに励まされたけど、あまり悲観はしていなかった。なんせまだ2項目しかやっていなかったからだ。



 これからの結果次第ではいくらでも挽回のしようはあるのだ。それこそ身体能力でなら、このクラスの誰にも負けるつもりはない。運動系のテストが来るなら、そこでトップを取ればいい。



 さっき俺に悪態をついてきた奴も、騎士団候補生ほどではないにしろどちらの項目も良い記録を出しており、俺に対して嫌味ったらしい視線を何度か向けてきた。



 その度に、今に見てろよ……!と心の中で言い返し、少しでも結果が良くなるように、残りのテストに集中した。




 ※ ※ ※




 テストがいくつか終わったタイミングで、先生が中間発表として、テストの評価点順でランキングを作り、その紙を訓練所の壁に張り出した。



 生徒たちが食い入るようにランキングを見つめる中、俺もそのランキングを一目見ようと生徒の波を掻き分けて、ついに文字が見えるところまで来た。



 上から順に、



 1位   グレース・アイシクルロード



 2位   カレナ・クレンツアイン



 3位   カザガネ



 




 と、ランキングのトップ3は騎士団候補生が占めていた。カザガネはおそらく家名を学校側に伏せているのか、名前だけが記載されていた。



 そこから4位、5位と、知らない名前がズラリと並んでいる。上位にいることは期待していなかったので、そこまで気にしていなかったのだが、目にする数字が20を超えた辺りから、だんだん体に悪寒がしてきた。


 


 




 28位   ニア・ミーキュラスハート




 29位   グレン・ブエルガン


 



 数字は29で止まった。当然だ。このクラスの定員は30人だが、今日は1人来ていない生徒がいるので、29位の俺は最下位ということだ。



「嘘だろ……?」



 正直、もう少し上だろうと想像していたのだが、まさかここまで酷い結果になっているとは思わなかった。



「なあ、クラス最下位の騎士団候補生さんよお」



「……なんだよ」



 残酷な現実に打ちひしがれている俺に声をかけてきたのは、先ほど先生に質問をした時に挑発してきた赤髪野郎だった。



 ニヤニヤと笑みを浮かべて、ご満悦の様子だ。



「騎士団候補生って、一度でもBクラスに落ちると退学になるらしいぜ?」



「は?いや待て待て。そんなことあるわけないだろ!デタラメ言うんじゃねえ!」



「それがあるんだよグレンくん……」



 俺が挑発男の言葉を否定したと同時に人の波をかき分けてカレナがやってきた。



「騎士団候補生は、入学したら必ずA組に入るけど、一度でもBクラスに下がったら、将来性が無いと判断されて退学になっちゃうの」



 まだ付き合いは短いが、カレナが嘘をつくような性格だとは思えない。まさか、本気で言っているのだろうか。



「入学届けの手紙には入ってないから、本当なら師匠のミネンさんが教えてくれるはずなんだけど、グレンくん本当に何も知らなかったの?」



「あ、ああ……」



 まさかの結果を見てすぐのタイミングで、挑発男とカレナからまさかのカミングアウト。



 俺は入学初日から、知らないうちに退学への一歩を踏み出していた。


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