第22話 邂逅
「え、仮面?てかお前も騎士団候補生?」
俺たちに声をかけてきた少年は仮面を被っており、あまりにも異端な格好をしていた。周囲からも視線が飛んで来ているし、この少年が普通じゃないのは間違いない。
「初対面の相手に対してお前呼ばわりとは、さては君、田舎者だな?」
「ふふっ、田舎者……」
「は?」
仮面に隠れて分からないが、間違いなくコイツは俺を舐めた顔をしているだろう。というか田舎者じゃないし。6年くらい前から王都ここ暮らしだし。てかカレナ笑ってるし、どこにウケるポイントがあったのだろうか。
ただ、ここでコイツの発言にいちいちムカついてもいられない。初日から他の生徒と揉め事を起こすのはゴメンだ。
「コホン!……悪かったな、お前呼ばわりして。……ええとカザガネくん?」
席に書いてある名前だが、この辺りではあまり聞かない名前だった。カザガネも一応騎士団候補生のようだし、席も近いのだから仲良くしていきたい。
「ふむ、まあいいだろう。本来なら制裁を下すところなのだが、素直に謝ってくれたことだし今の非礼は忘れよう。あと呼び捨てで構わないぞ、グレン。それにカレナ」
と仮面の内で鼻を鳴らした。謝ったこちらとしてはものすごく不本意な態度だが、喧嘩にならなくて良かった。
席も教えてくれたわけだし、性格に癖があるだけで悪いやつではないんだろう。呼び捨てで良いと言われたし、案外友好的だ。
「そういえば、まだグレースは来てないんだな」
「結構時間にルーズらしいし、多分ギリギリで来るんじゃない?」
とカレナは言っているが、どこからそんな情報を手に入れたのだろうか。カレナも貴族のようだし面識はあったりするのだろうか。
「……噂をすれば、だな」
すると、カザガネが扉の方を向いて呟いた。
教室の扉が開いた瞬間、室内にいる生徒の視線は彼女に集まった。俺とカレナが教室に入った時とは違い、皆の視線からは緊張感を感じた。
それほどグレースの知名度が高く、実力も知れ渡っているということだろう。ここにいるのは王国内の魔法学校を首席で卒業した人間たちだ。
そんな人間たちからも格上として認識されているその存在感は、俺たちとは比べ物にならないくらいに凄かった。
一瞬、時が止まったのかと錯覚するような雰囲気に陥った教室は、グレースが歩みを始めたことで元に戻った。
「グレース!こっちこっち!」
それなりに広い教室のため、グレースは自分の席を探すのに苦労するだろうと踏んだ俺は、こちらへと手引きした。
「……どうも」
俺たちのいる場所まで来たグレースは、軽く会釈を行った後、自分の席へ座るや否や、持ち物の中から本を取り出し、そのまま読み始めてしまった。
(あれ……?)
この前街中で会った時と、まるで雰囲気が違っていた。今は制服だし、雰囲気が違うのは当たり前と言えば当たり前なのだがそういうわけではなく、なんというかそっけない感じだ。前はもっと友好的だったというのに。
「なあ、俺グレースに何か悪いことしたか?」
恐る恐るグレースに尋ねると、グレースは本を閉じてこちらを睨んだ。明らかに不機嫌な表情をしている。これはやばい。
「話しかけないでください。読書の邪魔です」
「グレース、その言い方はあまりよくないんじゃないか?訂正した方がいい」
カザガネが俺とグレースの間に入って注意した。カザガネお前、第一印象悪かったけどやっぱりいいやつじゃないか……!
「この際ハッキリさせますか……」
カザガネの注意は通らず、グレースはその場で起立し、教室全体に向けて言い放った。
「ここにいる生徒の皆さん全員に伝えます!わたくし、グレース・アイシクルロードは、今後の学園生活であなたたちと友好的な関係を築くつもりが一切ありません!なので、わたくしとお近づきになりたいだなんて考えはしないでください!……以上です」
そう言い終えると、グレースは座って読書を再開した。
その様子を見て、生徒たちは絶句した。もちろん俺たち3人もだ。
いきなり立って何を言い出すかと思えば、友達要りません近づかないでください宣言だなんて、常軌を逸している。
「波乱だ……」
俺の学園生活、1日目からかなり波乱の予感がした。
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