第21話 物語の始まり
家に戻って来てすぐ、郵便受けに先ほどグレースに渡したものと同じ形状の封筒が置いてあるのを見つけた。
「おおっ!来てる来てる」
玄関の前に置いていた筈のメッセンジアバードの餌は無くなっているので、おそらく手紙だけ届けた後、餌だけ食べて帰ったのだろう。
「この封筒の中に結果が……」
封筒を持った瞬間、手に汗が滲んだ。きっと今度こそ俺の合否判定が載っている。
「よし」
先ほどグレースの封筒を開けたときにはもう覚悟を決めていたのだ。これ以上何かにビビる必要なんてない。
そう決意を固めた俺は、封筒の中身を取り出した。
※ ※ ※
ついに、魔導学園の入学式の日がやってきた。
俺が今いるのは魔導学園の入り口だ。辺りを見渡すと、同じ制服を来た生徒たちで溢れている。この生徒たちの大半が首席で魔法学校を卒業しているだなんて、考えても想像がつかない。
そんな中、後ろから聞き覚えのあるはつらつとした声が聞こえてきた。
「おはようグレンくん!負けた時はどうなることかと思ったけど、無事に合格できたみたいで何よりだよ」
「おはようカレナ。心配させたみたいでなんか悪いな」
「ううん、気にしないで。先生が来るまでは教室で待機だったよね?せっかくだし、一緒に行かない?」
「ああ」
※ ※ ※
学園の中を歩くこと数分、俺とカレナは無事に教室まで辿り着くことができた。
中は思ったよりも広々としていて、それぞれの席に生徒がポツポツと座っている。
教室の中には、既に中にいた生徒たちの視線が一瞬こちらに集中する。
「うわ、ガチでこの教室を大人数で共有するのか……!人口密度半端ねえな……!」
「教室入ってその反応する人見たことないな」
カレナはそう言うが、6歳の頃に親を亡くし、復讐のためにミネンから諸々の教育を受けていた影響で、俺は学校に通った経験がない。故に、今のこの状況を少しだけ気持ち悪いと感じてしまっている。
「席に名札貼られてるね。騎士団候補生は特待生扱いだから、私たちの席は1ヶ所に固まってるんじゃないかな」
教室の真ん中に教壇が置いてあり、それを取り囲むように生徒の机が並べられている。そしてその机の上には、カレナの言う通り名札が貼られている。
見たところ、教壇付近に文字を書くような黒板は置かれていないので、座学の授業形式は教員による講義が主なのだろうか。
カレナと一緒に自分たちの名札が貼られている机を探して歩いていると、不意に声をかけられた。
「君たち、騎士団候補生だろう?なら席はここだぞ」
声の先へと顔を向けると、そこには仮面を被った少年が座っていた。
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