第2話 騎士団候補生 カレナ・クレンツアイン
「前見たときも思ったけど、やっぱり大きいなあ王学!」
魔導学園の正門前に立った瞬間、目の前に広がる学園の敷地を見て自然と感嘆の声を漏らしてしまった。しかもこの光景を見るのは2度目であるというのに、その衝撃は初見の時に感じたものとなんら変わらない。
ヴァルサレン王都魔導学園、通称『王学』は、王都の敷地の約1割という膨大な敷地面積を有する、大陸内最高クラスの魔導学園として知られている。観光も可能であり、正門からの出入りは一般人でも可能なのだそう。
王学の入学試験を受けられるのは王国内の魔法学校を主席で卒業し、魔法学校から推薦された生徒と、王国騎士団に所属する団員から直接剣と魔法の指南(3年以上)を受けた騎士団候補生のみである。
ちなみに俺は魔法学校に通わず、王国騎士団員のミネンに3年以上剣と魔法の指南を受けているため、騎士団候補生として入学試験に参加することとなる。
尚、魔法学校から推薦を受けてきた生徒の入学試験とは別日での開催なので、今日試験を受けるのは俺を含めた騎士団候補生のみである。
「……試験会場は確か、学園中央の巨大闘技場だったっけ。そこにミネンもいるんだよな」
巨大闘技場の中に、おそらく受付会場もあるのだろう。そう予想した俺は、学園中央にある巨大闘技場を目指して、無駄に大きな正門を潜り抜けた。
※ ※ ※
完全に迷った。
中央にあるという話だったので、正門から真っ直ぐ進めば見つかると思っていたのだが、正門を潜った先には大きな建物が無数に建てられており、まるで建築物で作られた巨大な迷路のように俺を惑わし、どんどん正門から離れて知らない場所へと導かれていった。
「どこだよここ!?このままじゃ試験に遅れる……!」
時間にそこそこ余裕を持って出たはずなのに、このざまとは、ミネンになんと言われるだろうか。
ちなみに今俺がいるのは、建物が並んだエリアを抜けた先にある森林型の庭園である。
休憩用のベンチがあるので普段は生徒の憩いの場として利用されていたりするんだろうか。
庭園には色とりどりの花が咲き誇り、水路にはこの辺りではあまり見かけない魚が泳いでいる。こんな状況でなければきっと和んでいたはずだ。こんな状況でなければ。
不思議なことに正門を抜けてからここに来るまで学園の教員とも生徒とも、観光に来た一般人とも出会っていない。
そんなことを考えていると、ふと正面の茂みから人の気配を感じた。そこそこ離れているが、おそらくこちらに気を向けているのだろう、なんとなくそんな気がする。
「誰だ!俺を見てるのは分かってるんだ!隠れてないで出てこい!」
そう茂みに声をかけると、茂みが揺れて1人の少女が姿を現した。隠れていた割には意外と簡単に姿を現してくれた。
「すごいね君!こんな離れてるのに気づけるなんて!」
肩にかかるくらいの金髪に、翡翠色に輝く瞳を持つ少女は、隠れていた癖に無警戒にこちらへと駆け寄ってきた。
身長は俺と同じくらいで、服装も高価ではあるが年頃の少女が着そうなもので学園の制服ではないし、この学園の生徒ではないのだろう。となるとこの少女は……
「もしかしてお前、騎士団候補生か?」
彼女の姿を見て俺が導き出した推測は、俺と同じ騎士団候補生である可能性。一般人が観光目的で来ている可能性もあるので断定はできないのだが、多分それは違う。
そして、その推測は当たった。
「うん!私は騎候生のカレナ・クレンツアイン!見たところ、君も騎候生だよね?」
カレナ・クレンツアインを名乗る少女は、輝く金髪を靡かせてそう言った。
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