トラウマの正体④
やはり確固たる目標のある人間は強いのだろう。
彼女にとってあのレベルの嫌がらせは雑音程度でしかなかった。
その後も彼女の躍進は目覚ましく、担当している投資先は短期間で凄まじい成長を遂げていた。
このまま順調に行けば、2~3年後にはエグジット(投資先企業の株を売却し、リターンを得ること)出来る案件もある。
いやはや、最早俺が教えることは何もないだろう。
そんな感傷に浸ってしまえるほど、彼女の成長は目を見張るものがある。
また余談になるが、飛鳥に嫌がらせをしていた同僚は投資資金の私的流用がばれ、会社を解雇となった。
「彼女、凄まじいな……」
「へっ!? あ、はい。そうですね」
俺がいつものようにデスクで仕事をしていると、後方から経理部長が話しかけてきた。
滅多に絡まない人から不意に声を掛けられ、思わずおかしな声を上げてしまう。
「彼女の教育係は君、だったか?」
「は、はい、そうです」
「そうか……。彼女なら、どこへ行っても通用するだろうな」
「は、はぁ……、そうですね」
「いや、すまん。何でもないんだ。邪魔をした」
そう意味深なことを言うと、経理部長は自分の業務スペースへ戻っていった。
わざわざそれを言いに来たのだろうか?
「経理部長、急にどうしたんすかね?」
享保も不審に思ったのか、俺に近付き耳打ちをしてくる。
「さぁな」
普段であれば、気にも留めないのだが、俺は何故かこの時の違和感をいつまでも拭いきることが出来なかった。
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