第19話 光と闇の勇者達

 嘘でしょ!?嘘でしょ!?嘘でしょ!?


 私はクリスお手製の猫の仮面をつけて、服は防寒用にモコモコの暖かい毛皮のコートを纏っていた。


 それより驚いたのは、今までクリスが爆速で事を終わらせてきたのに、唯一終わらなかった!!


 背中から心臓を光の剣が貫き、さらに首を刎ねられても黒髪で赤い目のイケメン闇勇者は絶命しなかったのだ!!


 こんな事初めてだわ!!

 まさか、クリスの爆速が通じない相手がいるなんて!!


 しかもなんか首がくっ付いて傷も消えて生き返ったから怖すぎる!!闇の勇者は不死身なの!?


 クリスも一筋縄じゃいかない。

 なんて言っていたし、それほど強敵って事よね!?


 *


 遡る事数十分前。


 私達は闇のアンチ勇者の元に転移したけど、正にこの街を出ようとしていた所を目撃して物陰から見ていた。


「不味いわ。街を出ちゃうわ!」

 と焦る私に対し、クリスは冷静に剣を構えて言った。


「不意打ちを狙い、爆速で奴の心臓を確実に狙い、首を刎ねる。


 エレアは絶対に前に出るな!」


「ひ、卑怯じゃない!?いくらなんでも!」

 と最早勇者としてそれはどうなのかと思ったけど、クリスはいつも爆速で終わらそうとするし、これで邪神復活前に世界が救われるのなら……。


 と思っていた。


 *


 なのに。

 死なない!!


 流石ダークヒーロー!!闇の勇者!!

 完全に侮っていたわ!

 ていうか、心臓と首刎ねて生きてるとか最早バケモノでは!?

 急所とは何!?本当に人間なの!?


 と私の中の突っ込みが追いつかないわ!!


 クリスは静かに剣を構えて相手を睨みつけている。


 闇の勇者は首をゴキゴキさせている。

 完全にくっ付いてる!!

 こっわっ!!


「不意打ちとは卑怯な真似しやがる!

 てか、てめえの面!挿絵で見た光の勇者そのものじゃねぇか!!


 クククク!そうか、闇の精霊王がなんか言ってやがったな!!


 確か作者が死んで転生して光の勇者になってるとか?」

 と闇のイケメン勇者が笑う。

 こちらの素性は既にバレているのね。

 まあ、クリスは小説の主人公だったし、挿絵で読者ならバッチリ見てるもんね!!


 アンチだけど。


「俺が死なないから驚いてるんだろ?クククク!急所を狙ったのに死んでねえもんな!!


 だって俺は闇の勇者アノン・ツィリー様だからな!!闇魔法でいろいろできちゃうんだぜ!?」

 と自らアノンと名乗ったアンチ勇者に対し、クリスは無言だった。


「く、クリス、言い返したら?」

 と後ろでぼそっと言うと


「光魔法……ライトキューブ!!」

 といきなりクリスは攻撃魔法を放った!!


 アノンはいきなりその名の通り光のキューブに閉じ込められた!


「光魔法……プリズンシャワー!!」

 とクリスは先手必勝で連続で魔法攻撃をした。キューブの中から無数の光がアノン目掛けて体中を突き刺していく!!


 ひいいい!相変わらず容赦が一切ない!!


 しかし、その時キューブがバリッと割れた!!


 黒い繭が中からでてきて繭からアノンが出てくる。


「おい、お前話通じねえのか?作者さんよお!!いきなり攻撃するなんてこの卑怯者が!!


 それでも光の勇者か!?」


 とアノンが言う。

 いや、確かにその通りだよね!

 クリス物凄く卑怯だもん!!


 しかし、不味いわ。クリスの攻撃が一切通じてない!強い!!


 ていうかこんな真面目な展開に突入するなんて信じられないわ!!

 と私は生唾を飲むが、クリスは


「ふーーっ」

 と息を吐いて


「お前強いな。認めよう」

 と言った!

 ええ!?認めちゃった!!?


「クククク!当たり前だ!今更何を言ってやがる?」

 とアノンが応えるとクリスは


「ふむ。じゃあ……」

 とクリスはいきなり消えた!!


「えっ!?クリス!?」


 アノンも呆然として


「は!?どこ言った!?」

 とキョロキョロしていたら、


「きゃああああ!」

 と誰かの悲鳴が上がる。


 近くにいた、アノンの仲間らしき、美人女騎士と美少女小悪魔の首がボトっといつの間にか落ちていた。


「ラビア!!セシリー!!」

 とアノンが叫んだ!!


 しかし彼女達は何も考える暇なくクリスの手によって死んだ。早すぎて誰も見てない間に!!


「うわあああああああ!!お前!!お前何すんだーーー!!!


 俺の!俺の女にいいいいいい!!」

 と恐ろしい闇が膨れ上がる!!


「お前を殺すのは難しくても、お前の気に入った女達は直ぐに殺せる。そして生き返らせることもできる」

 とクリスは言った。


「は、はあああああ!?」


「おい、下ネタアンチクソ野郎。僕の作品世界で女を穢しまくってるみたいだが……。


 お前がハーレムを作れないように僕は女達を殺して回る。世界から女を消す!」


「なっ!!なんだと!?」


 アノンの顔色が変わった。


「僕の分身達が各地にいるから、この先お前はもう美女や美少女と出逢う事はない!


 もうハーレムを作れないと言うことだ!


 僕の分身達が動いて女達を殺す!」

 とクリスは言う。

 いや、怖い!

 クリスの方が怖すぎる!!

 クリスの方がもはやダークヒーローではないの!?


「お前何考えてんだ!?ここはお前の作品世界のはず!そんな事して、この世界が壊れちまってもいいのか!?」

 とアノンが言うとクリスは


「ん?お前は僕の世界を壊しに動いてるのに何を言ってるんだ!?」


 と反論して返したクリスにアノンは…。


「く、狂ってんのか?こいつ……」

 と汗を滲ませていた。










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