第18話 下ネタアンチ闇勇者(アノン)

俺は【アノン・ツィリー】。至って普通の平民として産まれた。


しかし、街の奴らから気味悪がられていた。両親からも。


何故なら俺は闇の精霊の加護を受けて、産まれた存在だからだ。


闇の力を持つものは魔と通じやすく、時にはその力の通り、闇に落ち、悪事を働く輩が多い。


そんな俺は街の嫌われ者だったが、ある日突然に前世の記憶を思い出した。


俺は日本人で……。ニートで、仕事もせず、暇つぶしにいろんな小説を読み、その作者達へ感想を書き込んでいた。

最初は素直に面白かったから始まった。


しかし段々と、他の読者から賞賛されている書き込みを見て悔しくなった。作者は社会で成功しているのに、俺は底辺。作者はきっと才能とやらで成功してきたんだろうが、俺に言わせりゃ運だろう。


運も実力?は!そんなものあるわけない。たまたまだろ。


俺は賞賛されたことなんてない。

悔しい、妬ましい。感情は黒く染まった。


それから俺は、荒らしまくった。感想欄、レビュー欄に事あるごとに下ネタを連発して効果的に読者を減らそう、人気を落とそうとストレスを発散して、楽しんだ!


「お、もうすぐまた最新話の更新だな!今度はどんな下ネタで荒らしてやろうかw」

と考えながら前の作品をフリマに売り付けた。それも1円で。

こいつの作品は1円しか価値がないと言うことを知らしめる為にだ。


そんな時、日々の不摂生と運動不足からか急に眩暈がし、呼吸が苦しくなり、俺は救急車を呼ぼうとしたが、隣の部屋からなんと煙が出ていた!


は!?火事!?こんな時に!?

に、逃げなきゃ!

床を這い逃げようとしたが、上手く身体が動かない。


ちくしょう!!

その内に部屋が暑くなりこちらにも火が回る。俺は煙を吸い、そのまま意識が途切れ死んだ。



そして生まれ変わり、【アノン・ツィリー】に転生していた。


俺が覚醒すると、闇の精霊王と言うおっさんが現れてこの世界の事を説明して、ここがなんと俺が荒らしていた作品の中の一つだと気付いた。


そして俺には力がある事も。


それから俺は魔王側に付いた。

闇の力はチートで魔王さえも従わせることができた。


「クククク!この世界は俺のもんだ!!光の勇者?知るかよ!!ぶっ壊してやる!何もかも!!


そして俺の世界に変えてやる!!手始めに、人間を石に変えてやろうか?


あ、待てよ?そうだ、やっぱり美人は必要だよな!洗脳してハーレムを作ろう。男とブスや中年、子供は要らんな!


クククク!さあて楽しい旅を始めるか!!ヒャヒャヒャ!!」


そして俺はとある街の酒場で美女達に際どい格好をさせて楽しんでいた。もちろん男は1人もいない夢のような世界。


これからもどんどん俺だけの世界を作っていこう!魔物達も皆俺の味方だし、いい気分だ。


因みに俺は闇の勇者だが、容姿はいい!正に闇を持って産まれた男!黒髪に端正な顔。瞳はルビーのように赤い。

魅了にかけなくても女は寄ってくるだろうが、一応かけている。やっぱりなんでも言うこと聞く女とか最高だし!


女なんて男に媚びていればいいんだよ!!まあ、子供ができたらめんどーだから毎回その辺の後処理魔法はしっかりかけといてやるだけ有難いと思ってほしい。


するとゴロンと足元に汚えおっさんの石像が転がった。


「ああん?誰だよこれ転がしといたの!けっ!」

と俺はおっさんの石像を踏みつけ砕いた。


「ギャハハ!脆いなあ!!」


さあて、そろそろ次の街に行くべきかな。この街の女達にも飽きたし、別の街の美人を探しに行ったりするか。

ついでに人間の王もぶっ殺しとかねーと!!


と魅了にかけた女達が行かないでと泣き喚くのを


「よしよし、大丈夫だ。いい子にしてたら戻ってくるからな。俺の事を想って待っててくれ」

と適当に全員の女達に言い、いい気分で俺は酒場を出て旅を続ける。因みに腕の立つ女剣士を連れている。無口な美女だが、魅了にかけ、もちろん旅の間中も相手してもらっている。


後、美少女小悪魔も連れている。こいつは女剣士ほど胸が無いが、まあそこも可愛いと思い、魔界から引き抜いて連れてきた。


そろそろ夕方だし行くかな。

この街は結構寒いんだよな。

とティルズの街から転移魔法を発動した時だった。


グサッ……。


ん?


一瞬すぎてわからなかった。


俺の心臓から眩い光の剣が刺さってる?


後ろから攻撃されたようだ。

おいおいおい、なんだこれ?


俺は後ろを振り向こうとした。

しかし……。


「ひ!!」

と言う、魅了にかかってない女の悲鳴を聞いた!!


そして頭がグラッと傾いて地面に落ちて、俺はようやく見た。


なんかイケメンが無表情で俺を見下ろし、そして俺の頭を踏んだ。


は!?


俺…闇の勇者だけど!?


男は俺の髪を掴み、


「穢らわしい!爆速で終わらせて良かった。消えろ!クソアンチ!!」

と言った。


な、何故……!??????


俺の体と首は光の炎に焼かれて俺は……。

本当にここで……死ぬ??


いや、死ぬかよ!!


ゴウッと闇の力が溢れ、俺の身体と首はくっ付き出した。


「!!」


「嘘っ!?」


「エレア!退がれ!!こいつ、やっぱり。一筋縄では行かなかったか!!」

と男が言う。


「何だあ?お前。クッソみてえなイケメンだな!


まあ、俺もイケメンだけど……。いきなり後ろから心臓に剣刺して首斬るとか最悪だな!


死ぬかと思っただろ!?闇のチートがなきゃ死んじゃってたぜ!」

と俺は男と対峙した。





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