第5話
「…そう言って逃げる気なんじゃないの?」
「逃げない。絶対に逃げない」
はっきりと俺は口にする。
「そう、…。そうね、ええ」
独り言を数回繰り返した後、宇津月は手錠を外した。
それと同時に俺は両手で宇津月を抱きしめた。
「どうして?」と涙収まらぬまま困惑する宇津月。
「私はあなたに酷いことをしたはずよ?それなのに...「だからなんだよ」
遮る。かっこつけたいわけじゃない。彼女を好きなわけじゃない。
でも、抱きしめないと、遮らないと。そんな気がした。
「確かに酷いことをされたさ。「ならなんで!「でも!
それは俺のことが好きだからだろう?俺のことが嫌いなわけじゃないんだろ?」
少し強めに言ってしまったし、文章だけ見るとただのナルシストだ。
けれどそんなことは今は思わなかったし、どうでもよかった。
「ええ、あなたのことを好きよ。愛してやまないぐらいは、ね。
でもだからこそ好きな人を傷つけてしまった私を私は許せないのよ」
再び泣き始める宇津月。女子を泣かせる男子は最低だ。
これが演技かもしれない。そんなことはわかっていた。
でも、それでも。たとえ嘘泣きでも。
「俺が許す。だから、もういい」
零れ落ちた。言葉になっているかどうかもわからない。
「あなたは、これが演技だと思わないの?
絡まれるのはめんどくさいはずよ」
ふと訊ねてくる宇津月。この返答で決まってしまう。
そんな成否をこの僅かな時間で決めなければならない。
脳内でため息をつく。
「あぁ、演技かもしれないのは百も承知だ」
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投稿間隔が空いて申し訳ございません。
また速筆ですので今後重大な修正が入る可能性があります。
予めご了承ください。
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執筆秘話(?)
これは「【うつつ】を抜かす」からとっています。
「沙二(さふ)」は左府という意味で、左大臣を指します。
これに対し
南を指します。
右大臣と左大臣は日が昇る左大臣のほうが偉く、
日が沈む右大臣のほうが下位です。
要するに沙二は左大臣を指し、
水島は右大臣を指します。
つまり沙二のほうが偉い(優位)であるということです。
まぁ、かなりのこじつけですが.....
というわけで意味もなく開催した執筆秘話でした。
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