第4話

俺が教職員室まで付き添うことになったが、

よほどあの言葉が嫌だったのか

宇津月は俺の手を握ってきた。

特に意識はしなかった。

こんなので意識するほどクズでも変態でもない。

ましてや二次元に勝るものはない。

そんな事実確認を心の中でしつつ、

歩いている途中、

ふと、教室から腕が伸び、入れ込まれた。

宇津月は俺を

その伸びた腕の犯人は笛俣だった。

しかしそれよりも妙だ。

コイツはさっき帰ったはずだし、

宇津月は臆すどころか微笑んでいるように見える。

まさか、予感がよぎる。

『その顔だと、ちょっとはわかったみたいね。

そう、私達はグル。あなたを連れ込ませて閉じ込めさせる為の

あくまでもの協力関係を結んでいた。まぁ、それもこれで終いだけど』

宇津月は、

『私、名演技だったでしょ?』

とニコニコしながら聞いてくる。

人は安易に裏切る。

だから俺は三次元が嫌いだ。

『はぁ』短く深いため息が出る。

いくらため息をしても足りない程の

憂鬱感と俺の勘が『こいつらは面倒くさい』と叫んでいることからの

ため息。コイツら二人には永遠にわかることはないだろう。

さてはて、おそらくだが宇津月が屋上でドアの鍵を閉めたのだろう。

誰か助けを呼ぼうと、

『だ、…』と言いかけて口を口で押さえられた。

ドキドキはしない。面倒くさいことが確定しただけだ。

しかしあろうことか宇津月はベロチューをし始めた。

舌を慌てて引っ込めたものの、遅かった。

まずい。

イマドキのJKを犯すとなると俺の社会的地位及び人生が危うい。

己の性欲を満たそうとなれば俺は死んだほうがマシだ。

宇津月はキスし終えると、俺は言う。

『窓からもドアからも丸見えだし、声出せば解決するけど』

笛俣がニヤニヤしながら

『あら、それは脅しかしら?窓は防音シートを貼って閉めたし、

ドアは向こうからは見えないし同じく防音済み。隙間も補強してあるわ』

どうやらかなり計画的な犯行だったらしい。

『おしゃべりが過ぎるからあなたは少しお眠り』

と言い、怪しげなハンカチ、否、布を俺の顔に近づける宇津月。

息を吸い込み、止めるも肺活量が無い俺は10秒程で

あっけなく撃沈した。


___


気がつくと、見知らぬ部屋にいた。

天井を見ている限り学校ではない。

『あ、起きた』

宇津月が言う。

『……拘束についてはもう問う気も失せたが、

ここは何処で今は何時だ』

『あら、諦めが早いのね。

ここは私達の部屋で今は2時を回ったところね』

電気をつけて大丈夫か?と思い窓に目をやると

シャッターが落ちており、光で助けは呼べなそうだった。

どういうわけか手錠をつけられ、しかも手錠は床に固定されていた。

『んで、その嘘泣き宇津月ちゃんはいつ俺を解放してくれるのかね』

はて、という顔で、

『なぜ解放しなくちゃならないの?』

と尋ねる。

あぁ、ダメだこいつ、と思った。

さてどうしたものかとキョロキョロしていると、

床ドンされた。

『ねぇ、あなた。あなたは私だけを見ていればいいの。

他の女なんていらない。あなたには必要ない。

今日からあなたと二人きりになれるって朝からドキドキしっぱなしで、

あの女が上手くやってくれてるのを

屋上のドアで聞いてた時なんて

ニヤニヤが止まらなくって

アソコからタラタラとつたっちゃって

誤魔化すの大変だったんですよ?』

ニコニコしながら言う。

あぁ、コイツ末期だなと思いつつ、

『やめとけよ。

こんな薄汚い二次元大好きオタクに

好き好んで初めてを捧げるなんて

アホすぎるし冷静になった時に後悔するぞ』

淡々と述べた。

さて、どうなるかと思いきや

水が垂れてきた。

涙だった。

『おいおい、泣いても無駄だぜ?』

と言うが、泣いていた。

嘘泣きではないようだった。

『あなた、いくら私がアピールしても

無視するし、何しても反応してくれないし、

私ってそんなに魅力ないかな?』

あの席に居座るのがアピールだとは

思いたくもないが、反応はしたつもりだった。

魅力も一般的に言うなればあるだろう。

艶のあるポニーテールに

清楚に見せかけたミニスカは

多くの男を落とすだろう。

.....! 俺はようやく気づいた。

あの時男子の目つきが変わったのは

宇津月の好きな人(俺)にフラれたのと

同義の状態で泣いていたからだと。

内心納得したし、

実際に宇津月はクラスの殆どの男子を

落としていた。

『.....一般的に魅力はあるんじゃないのか?

実際モテてたんだから聞くまでもないだろ?』

と言うと、

今日三回目の平手打ちが飛んできた。

しかし弱々しく、痛くも痒くもなかった。

『他の人からの視線はどうだっていいの!

あなたから見て魅力があるかないのかが

私にとって大切なの!』

濁点が入ったような声で言う宇津月。

ヤンデレなのは睡眠薬で明白だが

もうわけがわからなくなった。

『宇津月』

泣き止んでない声で応答する。

『何?』

俺ははっきりと言った。

『逃げないから、

手錠を外してくれないか?』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る