第9話 帰り道②
ちょっかいをかけられながら自宅まで帰った。
妹と一緒に学校から帰るなんて久々で何だか昔の自分に戻ったようでもあった。
僕の後をついて歩いてくる凛も幼かった頃のように見えてきた。
「そういえばお前はどうしてあの駅にいたんだ?」
鬱陶しいくらいの「あの女だれ?」攻撃をくらって今まで参ってしまっていたため忘れていた。
こいつの中学は鳥南高校からみて我が家を挟んで反対方面にある。
どこかに行くにしても家でまっていればいいはずなんだが、、、、、、
「あっ」
「そうでした⁉」
そう言うと、ブレザーのポケットから無機質なスマートフォンを取り出し、あるトーク画面を見せてきた。
『凛ちゃん。今日家に行くから驚かないでね!』という文面で僕らの保護者である七海さんからの連絡だった。
「これがどうかしたのか? 別によくあることじゃないか。おびえる必要なんもないじゃないか。」
そう言う僕に、凛は見せてきていたトーク画面を下にスライドしてトークの続きを開示した。
『重大なお知らせがあるからお兄ちゃんにも伝えておいてください。』と珍しく堅苦しい文章でつづられていた。
瞬発的に凛の顔をみた。
「やばくね?」そう口パクをすると、それに呼応して「やばいよ!」と返事が来た。
七海さんとの関わりは正直言ってそこまで深くない。ということもないが、別に仲が悪いとかそういったことではない。
彼女も彼女でも生活があるからそれは仕方がないと思う。
名目上の保護者なのにこの前は僕の高校の保護者参観にも来てくれた。正直これはやりすぎなんじゃないかと思った。
凛の中学校の体育祭の時なんて自前のお弁当を用意してくれていた。
七海さんは僕らにそれはそれはよくしてくれた。そこに関しては何の不満はない。むしろ無理させている気にもなっていた。
「兄さん何かしたんですか?」
僕には心当たりがない。それはわが妹も同じのようだ。僕にも責任はあると思うが自分じゃないからといってすぐに僕を疑う癖は直してほしい。
それを伝えると「大体こういう時は兄さん絡みじゃないですか。」と少し機嫌を悪くしたようにそっぽを向いて、僕を置いてスタスタと行ってしまった。
あまりにも先に一人で行ってしまうもんだから、小走りをして何とか追いついた。
こいつの機嫌はどうでもいいことほど直すまでに時間がかかる。変なところで意地を張ったりする。視点を変えればちょっと子供っぽい面が残っていて可愛げがあるのでとりあえずはこのままでいいと思っている。
ご近所さんには僕らは兄弟二人で暮らしていることを伝えているが、自分たちの家よりも二、三倍大きな邸宅に子供だけで住んでいることに対してやっかみでもあるのかあまり僕たちに干渉してこない。
僕としては人とのかかわりは必要最小限度にしておきたいから構わないのだが、凛の兄としては一応自分たちの生活圏内は安心できる空間にしておきたいので困ってもいる。
僕らの家が見えてきた時、向かいに住む山内の奥さんとすれ違ったがお互いぎこちない会釈をしてすれ違ってしまった。
特殊なのは僕らのほうだからこちらからコミュニケーションを取りにいかないと向こうからしたら避けられていると感じてしまうのは分かっている。
そこまで分かっていて打ち解けることのできない僕の性格にも困ったもんだ。凛にしたって口調からして女子中学生とは思えないほど堅苦しいからな。こういったときに兄弟であることを実感する。
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