第8話 帰り道






ももちゃんとのシリアスな局面も高校の最寄り駅までで無事に終わってくれた。


一緒に帰ると言い出したため変える方向が同じなのかと考えていたがそれは駅までで

それ以上彼女は僕についてこようとしなかった。


いつも道りの帰り道。


普段は学校を出てすぐにイヤホンをつけて電車に乗って家に帰るまでにアニメを三本

見るという黄金のルーティーンが崩されてしまった。


電車に乗っているときも三十分以上あったのにもかかわらず、自分の身の回りで起こ

っている出来事をボーっと考えていてしまっていた。


よって駅の改札を出てからルーティーンにのっとりイヤホンを装着して家に向かおう

としたときに後ろからいきなり腕をつかまれた。


瞬間的に警官に捕まったと勘違いしたため耳のイヤホンを隠そうとした。


「何しているの?」


ゆっくりと後ろを振り返るとそこに立っていたのは正義の味方ではなく僕の妹であっ

た。


「凛⁈」


僕は駅の中で反射的に大声を出してしまった。


学校の位置も最寄り駅も離れた場所にあるはずの凛がどうしてここにいるのか。


「なんだよいきなり! 何でここにいる⁉」


僕の質問については何にも答えずに僕のほうに近づいてきた。


「ちょっと!! さっきまで一緒にいたあの女は何ですか⁉」


正直僕にもよくわからない。と言ってやりたい。あいつと僕の関係。クラスメイトの妹ってことでいいのか? しかし、今日まで一言も言葉を交わしていなかった人をクラスメイトというのは少し違和感を感じた。


少し黙り込んでいると凛の方から「もしかして彼女!」という疑いをかけられたが、一瞬にして否定して見せた。


「クラスメイトの妹だよ」


諦めてそう言うことにした。別に噓ではないからいいだろう。余計な勘違いされるほうが問題だ。


自宅方面の電車がやってきたため少し突っかかってくる妹を置き去りにするように車両に乗り込んだ。もちろん凛も僕と同じ車両に乗り込んだ。


電車に乗ってからの凛はおとなしいものだった。電車でのマナーを遵守しているのだろう。律儀な奴だ。おかげで僕も落ち着いてアニメ視聴ができる。


駅について電車を降りてからのことを考えると憂鬱だ。




*************************************


  


   コメント感想等があればよろしくお願いします。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る