第7話 この妹

  みんな僕のことをやばいやつみたいに見ないでほしい。

 

 こっちは極めて真剣だ。


「私は普通の美少女だから問題ないけどね」


 普通の美少女って日本語終わってんだろ。


 そもそもなんでこいつが生き別れの姉貴のことをここまで気にするのか理由がいまいちわからない。


「それでお前は僕にあいつの友達になってもらいたいのか」


「なにいってるの先輩に選択肢なんてないんだよ」


「二つ目のお願いってことか?」


「そう」


「珠姉の友達になってあげて」


「今度のお願いは長期戦になるかもしれないけど先輩だって学校に友達いないんだから悪くはないでしょ?」


「確かにそうだけど僕が一人でいるのは一人でいたいからだ」


「そうじゃなきゃこんなイケメンがボッチなわけないでしょうよ」


 自分言っていて恥ずかしかったが僕の顔面は正直上の中ぐらいなんじゃないかと個人的には思っている。


「まあ、それはいいんですけど約束は守ってくださいね」


「それに」


「珠姉に恋しちゃだめだからね!」


「わかったわかった」


「大丈夫だよ、あんなおっかないの好きになったりしないよ」


「それは言い過ぎ」


「よく妹の前でそんなこと言えるね」


「すまんすまん」


「あいつに男友達が必要なのはわかったんだけど、お前がそこまで干渉しているのはどういうわけなんだ?」


「姉妹か姉妹でもお互いに面識を持ったのは最近なんだろ?」


 やっぱりこの姉妹とかかわっていく以上そこらへんのよく分からない事情をどうしても知っておきたかった。


「普通の人間にはわからないだろうね」


「あ、お兄さんみたいなね」


 今までの真夏の太陽みたいにキラキラ輝いていた彼女の目は完全に曇ってしまっていた。


「私もね、一応社長令嬢なんだよ」


「だから、今まで生まれてきて、親に敷かれたレールをたどらさせられていたんだよ」


「お前の姉ちゃんみたいにか?」


「そう」


「私の人生は操り人形のままで終わるものだと思ってたんだよ」


「そんな時に私に生き別れの姉がいることを知らされたの」


「その話を聞いたとき、親の経営を私に押し付けて楽して生きてるやつだと思っていたんだよ」


「でも、初めて会ったときに分かった」


「この人も同じなんだってね」


「いや、それ以上だってね」


「だから珠姉の九尾の狐のような圧倒的なふるまいを見て、この人の妹であることに感動できたんだ」


「私より窮屈な人生なんてそれまで考えられなかったしね」


「そしてその時初めて私が継ぐ予定の会社が財閥系のグループの一端でしかないことを知らされた」


「それらを知ったとき私の気持ちは楽になれたんだよ」


「自分はなんて小さい世界で生きていたのかと思わされたの」


「それと同時に私は唯一の理解者を得ることができたんだよ」


「両親なんてもう信用できなくなってたからね」


「私には珠姉しかいないんだよ」


 シスコンっていう言葉では表現できないものでもはやそれは完全に愛といっても問題ないものだった。


「よくわかったよ」


 このこと初めて会ったとき普通の明るい子だと思ってた。


 けど違った。


 この子のこの性格はあいつに出会ってから獲得したものなんだろう。


 そう思うとあいつのカリスマ性は半端ないな。









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妹>僕の世界でラブコメを!! あざみ みなり @minariazami308

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