第3話 僕の妹

「兄さん」


「もう朝ですよ!」


 この声を聞いて目を覚ますのが僕の毎日の習慣だ。


 このかわいらしくなくてかわいいのは僕の妹の凛だ。


 身内びいきといわれるかもしれないが、見た目に関してはつやのある真っ黒で長い髪もあいまってかなりかわいいと思う。


 特にこの真っ赤な目はだれにも負けないだろう。


 真っ赤?


 おかしいじゃないか、確かに僕の妹は吸血鬼のようにクールで美しいけれど僕が人間なんだから絶対に人間に決まっているじゃないか。


 そんなことを考えながら体を起こすとその訳が分かった。


 遅刻だ。


 目が真っ赤ってそれで怒っているっていうことか!


「いつまで寝ぼけているの兄さん!」


「家を出たときまだ寝てて心配だったから帰ってきてみれば!」


「妹よ」


「おまえはほんとうにやさしいなあー」


「昨日会った女とは比べられないほどいい女だ」


 ここで無意識に昨日の出来事を思い出してしまった。


「ねぇ、聞いてくれよ昨日ひどい奴にあったんだ」


 そう言って妹のほうを見ると、彼女は下を向いていて前髪で目は見えなかったが、おそらく吸血鬼化させてしまっていることに気づいた。


「お兄様?」


「わたくしがなぜここにいるかおわかり?」


「もちろんだよ!」


「君は僕の救世主なんだから」


 ちょっとふざけたのがよくなかったのかさらに真っ赤にさせてしまい、無言で玄関のほうに向かってしまった。


「ごめんなさい」


「一分でしたく終わらせます」


 そう言って顔を洗い制服に着替えて愛しの妹のほうへ向かった。


 僕は男の子だから朝の準備に手間がかからない。


 妹は少し自慢げな僕を見て、腰まで届きそうな自慢の黒髪ロングをかきあげた。


「男の人って楽そうでいいですね」


 おいおい、僕の妹こんな皮肉のきいたこと言うのか、


 まぁ知ってたけど。


 こいつは冷たいやつでも、裏表のあるやつでもなく、感情表現がへたくそなんだ。


 ようするに素直じゃない。


 だから本人には言えないが普通にかわいいやつってところだ。


 ここでツンデレじゃないのがみそだ。


「僕は別にいいんだけどお前は僕と一緒に登校してもいいのか?」


 思春期真っただ中の妹に質問するにしては直接的過ぎたかもしれないが単純に気になったので聞いてしまった。


 すると、呆れたように僕のほうを見て


「私は何?」


「吾妻 凛?」


「いや、そうじゃなくて」


「私の身分は?」


「中学三年生」


「そう、じゃああなたは?」


「高校二年生だけど?」


「兄さん学校は中学と附属でしたっけ?」


「いや僕受験したから」


「そうよ、兄さん昔無駄に頭よかったせいで私も受験しないといけなくなったんじゃない」


 何言ってんだこいつ、僕らの中学の附属高校に普通に進学すればいいじゃないか。


「そういうわけで学校の場所が全然違うし駅までだからかまわないわ」


 そうなんだろうけど、普通は嫌がるもんなんじゃないか?


 てか、こいつ僕の高校に進学するつもりなのか。


 こいつ別に勉強得意じゃないだろうに。

 

 何がそうさせるのか僕にはわからない。

 

 そんな話をしていると駅についてしまっていた。


「気をつけろよ」


「大丈夫よすぐそこなんだから」


 そう言って僕から離れていった妹を見送ってから電車に乗った。


 私立鳥羽々南高校に向かって。



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