第4話 私立鳥羽々南高校

 僕は学校生活自体あまり好きじゃない。


 しかし、嫌いというわけじゃない。


 気分によって変わる。


 僕の今日の気分はもちろんノーだ。


 理由は察してほしい。

 

 あのももちゃんとかいうやつのせいだ。


 いくら僕でもこんなに足取りのおもい登校は初めてだった。


 朝いちからこんな最悪な気分にさせたやつを絶対に許さない。


 なんなら今日見つけ出してやろうかな。


 そんな思考をまわしながら教室に向かった。

 

「二年D組」これが僕のクラス、


 別にクラスに序列はない。


 八つあるクラスがあるうちの普通の一クラスである。


 そしてその中で一際輝く女子生徒がいる。


 それこそが驪竜 りりゅう たまである。


 教室に入ると彼女が数名の女子生徒に囲まれているのが見えた。


 別にこれは珍しいものではなく、当たり前の光景だ。


「驪竜さん!」


「今日の放課後空いてますか?」


「もしお時間があるのならお茶でもどうでしょうか?」


 おいおい、


 ここはお嬢様学校かよ、もしかして入るクラス間違えたか?


 しかし、あの女の声を聞いて間違えではないことを確認できた。


「申し訳ないのだけれど今日は予定があるので遠慮させてもらうわ」


 冷たい声であしらったように見えたかもしれないが、彼女のスター性はそんな次元を超えている。


 彼女の狐のようで妖麗な雰囲気は人を寄せ付けていて、周りの人たちも彼女が話しただけでキャーキャーいっちゃっている。


 こんな女相手に話しかけなくちゃいけないことを改めさせられると、寒気を感じた。


 しかし、少しラッキーだったこともある。


 それは彼女と席が隣であるということである。


 いわゆる不幸中の幸いってところだろう。

 

 一度も話したことがないのには変わりないが、教室における彼女との物理的な距離が近いことはこのミッションにおいてこれ以上ないアドヴァンテージだろう。


「おはようございます、驪竜さん」」


 席に着いてからそんなおざなりな挨拶をすると無関心なのかこっちを見すらしなかった。


 こっちが勇気を振り絞って声をかけたのに顔すら向けなかった。


 これはさすがにきつい。


 なんてひどい女なんだ。


 まだ舌打ちとかされたほうがよかったわ、まじで。


「昨日君の妹にあったんだけど……」


 そこまで言うと、彼女は不意を突かれたのか僕のほうに思いっきり振り向き僕の口を押さえつけてきた。


「あなた少し黙りなさい!!」


 小さな頭を僕の耳に近づけてそういった。


 僕は正直なところ昨日会った女が本当にこいつの妹であるのか疑いをもっていた。


 しかしこの女の反応を見るに確実に関係者であることは明らかだった。


「あなた、名前はなんていうの?」


 あ、


 この女思った通り最悪だ。


 同じクラスの隣の席の苗字くらい覚えておけよ。


 この席になってから二か月たつぞ。


 彼女に教室から連れ出されているときにそんな愚痴が出そうになった。


「僕の名前は吾妻 徹、昨日君の妹にあったんだけど、」


 そういうと彼女は自分で聞いてきたくせにそんなことはどうでもいいといいきって僕につめてきた。


「どうしてあなたがあの子のこと知ってるのよ!」


 さすがにここまで自分勝手なお嬢様に怒りが抑えられなくなってきたがそれ以上に、今まで見たことのない取り乱しようを見れてめっちゃ気持ちよかった。


 こいつにもこんなかわいらしいところがあるなんて知らなかった。


 一瞬こいつが妹に見えて自分がシスコンなのを改めさせられた。



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