第2話 入学式
クラスの皆は暫し担任が来るのを待っておりその間俺は窓を眺め考え事をしていた。
──どうしたら面白い奴と思われるだ
ろうか?
──どうしたらモテるだろうか?
とそんな事をただ漠然と考えていた。
そして遂に結論へと至った。
内容はこう言った感じだ。
──入学式でふざければ良い、そうだそれだ、最近の女子はヤンキーが好きと聞く、それならば友達も増えるしモテる可能性だって大だ
とそんな事を考えていると突然あの真面目そうな銀髪ポニーテールの奴が睨むように俺を見据え否俺の足を見据えこの様に言ってきた。
「机は足を乗せる為にあるんじゃないの、勉強をする為にあるの、分かる?」
「へいへい、分かってますよ〜だ」
「分かったなら足を退けなさい。」
「嫌だ」
「はあ?何で嫌なのよ?」
「嫌だから」
「それは理由になってないわよ…もういいから早く足を退けなさいあと胡座をかかない、ちゃんとピシッと背筋伸ばして足はちゃんと下ろす、これぐらい小学校でも習ったでしょ」
と麻美舞は半ば呆れたように説教を続けるも俺は粘り続けもう我慢の限界にきたのか俺の足を掴み足を下ろそうとするが俺も負けじと抵抗する。
俺はこの時気付いていなかったがクラスの皆から冷ややかな目で見られていた。暫し喧嘩は続きやがて担任が教室へと着きその喧嘩は担任が止めた事で終止符を打った。
俺は結局足を下ろす羽目になり暫し不貞腐れ話も頭に入ってきていなかった。
担任が十分程入学式の流れやなんやらを話し、そして皆が廊下へと向かって歩き始める。
俺は話を聞いていなかった為混乱するもすぐさま立ち上がり廊下へと歩を進める。
そして体育館へと着き教頭?の声が聞こえてきた
「開式の辞これより平和6年度桜蕊高校の入学式を執り行います。新入生入場。」
そんな声がするや否や1組が体育館へと歩を進めそこはかなりの人溜まりで娘息子の入場にかなりうわずった気持ちのご様子である。
そして遂に3組の入場となり俺も体育館へと歩を進める。
カメラのカシャカシャとなる音や拍手の音に少々苛つくも表面上は穏やかにと何時もの顔付きで入場する。お袋は見えなかったが恐らく俺が気付いてないだけで写真も撮っていただろう。
そして遂に名前を呼ばれる入学許可なんちゃらと言うやつの番になり何と返事をするかまだ決めていなかった為焦燥感に駆られていた。
そしてとうとう1組、2組が終わり3組の番となる
「3組麻美舞」
「はい」
──やばい一人終わったぞ、どうしよう、どうしよう
と俺は焦燥感に駆られるも返事は決まり安堵した。
「志々目 洞爺」
「…チンチン…」
俺がそう言うやいなや場が白け一秒が五秒に感じる程の気恥しさを味わっていた。
そんな中先生や生徒らとは違った物凄い殺気に今更ながらに気が付きその殺気は麻美舞から発せられたものだと気付いた。
俺はただ陽キャになりたいから巫山戯たのだがそれは正に逆効果であり俺は顰蹙を買ってしまったようだ。
──ああ、病みそう…俺の陽キャになる為のお巫山戯は無駄骨に終わった。
やはりこの後俺は呼び出しをくらった
──ああ死にたい…俺はあまりにも不幸過ぎる…
そして入学式は終わりやはり呼び出しはくらった。
LHRが終わり俺は生徒指導室へと歩みを進めようとしたら物凄い力で腕を掴まれ誰かと思って振り向けばそこには鬼の形相でこちらを睨みつける麻美舞の姿があった。
「うげ、な、何だよ…!?入学式の件か?それならほっといてくれ!もう思い出したくもない!」
「思い出したくないのは…私の方よ…!」
そんな事を言うやいなや力が増し俺の腕がミシミシと鳴っているのに気が付きこの状況が如何にまずいか気付かされる事となった…
そしてそんな現場を見ていた一人の男子生徒が割って入ってきた。
「ま、舞さん、落ち着いて、落ち着いて、彼の手がミシミシ言っているよ!」
その男子生徒は舞に落ち着くよう促し俺の腕は解放された。
「亮介君、貴方は何も感じなかったの?せっかくの入学式を台無しにされて何も感じないの?」
「いやぁ確かに不快ではあったけど…」
「なら何故邪魔をするの?このクズ野郎は痛めつけないと分からないわよきっと!」
酷い言いっぷりだな…
「それこそ僕は駄目だと思うよ。何事も暴力で解決させようとするのは正直得策じゃないよ」
「そうだそうだ!亮介君の言う通り!」
と首肯するや否や麻美舞は怒気が増し先程よりも更に鬼の形相で睨みつけてくる。
「まあ彼はまだ多分もう懲りたと思うよ。何せ場が白けたわけだしあの時凄く顔が火照ていたからね」
と苦笑交じりに亮介はそう言い麻美舞がこちらを凝視してきて俺にこの様に言ってきた。
「本当に反省しているの?もう二度とやらない?」
「うんうん!もちのろんでもうやりませーん!」
「卒業式にお巫山戯したらただじゃすまないと思いなさいよ。」
そんな事を言い放ち麻美舞は踵を返した。
「お前良い奴だな!上の名前は何なんだ?」
俺は亮介の肩を組み満面の笑みでそう言うと苦笑混じりだが苗字を言ってくれた。
「入学式の記憶殆ど無いんだね…僕の苗字は山田って言うんだ。宜しく」
山田亮介は笑顔で握手を求めてきて俺はそれに間髪入れず答え握手を交わす。
「俺達今日から達な!」
「急だね…あはは…うん今日から友達。宜しく」
おう!と俺は笑顔で握手を求めた。それに亮介は笑顔で握り返してくれた。
俺は入学式で巫山戯、陽キャになろうとするも失敗に終わったが友達が一人出来ただけでも得をしたと締めくくり、今日はいい一日だったと思える日になった事に喜悦を感じた。
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