第10話 ミュージカルの日

 暑くもなく寒くもない天気の良い日だ。今日は「ミュージカルの日」。この国でも有名すぎるほど有名なミュージカル女優の生誕日を記念して作られた記念日だ。

 この日はお祭り騒ぎとなり、人々はミュージカル風に振舞うのを期待されている。

 あそこで買い物をしているお姉さんは有名な歌謡曲の曲に合わせて替え歌で

「今日はみんな大好きビーフシチューを作りましょう!

だから、ニンジン、玉ねぎ、ジャガイモ、に牛肉買うのよ♪」

と歌うと、店の店員がラップで

「お買い上げありがとう 売上上等 気分は上々 俺の賃金上昇」

と返事を返す。


 この日は好きな人に告白するのにも最適な日だ。愛の告白を歌にすればいい。日頃、恥ずかしくて言葉に出来なくても歌でなら伝えることが出来たりする。有名な恋歌から、オリジナルの歌、替え歌などでの告白が街中にあふれかえる。


 さて、僕はと言えば歌は得意ではない。しかし、ほんの少しだけ参加しようと公園の芝生まで歩いて

「こんな天気の良い日には

公園の芝生で昼寝しよう!

きっと気持ちいいだろう♪」

と歌いながら芝生に寝転んで目を閉じる。

 あたりは歌にあふれて、騒がしくて眠れないけど、人々のざわめきに包まれてポカポカ陽気の中、芝生に寝転んでいるのはとても幸せだった。

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