第4話 両親の許可《ミアside》

 団長の許可が降りたとはいえ、まずは親に話を通さなくてはいけない。

 昼間は二人とも仕事をしているので、夕方になって劇団長と合流した。

 一人で行くつもりだったが、これから子供を預かるのだから、と劇団長も来てくれたのだ。


 ……となると、両親のことを劇団長には話しておかなくてはならない。


「仲が悪いのか?」

「ううん。仲が悪いって訳じゃないけど、お互いに距離を置いてるの」


 両親も私が普通の子供でないことを感じていたのだろう。

 元から親子としては距離があったが、熊を倒したあたりで、両親からも表には出さないようにしているようだが、恐々と接されているように感じる。

 ……ただ、決して仲が悪いとは言えないのだ。


「それを不仲って言うんじゃないのか……?」

「ううーん、そうじゃなくって。同じ家に住んでいる近所の人ってかんじ?」

「??? ……他人じゃなくて? 近所の人?」

 団長にうまく伝わらなかったところで家に着いた。


 団長を連れて家に入ると、二人揃って怪訝な顔をしていた。

「ミア、その人は誰だい?」

「実はお願いしたいことがあって、その関係でこの人についてきてもらったの」

「お願いしたいこと?」

「うん。……この人はさっきの劇団の団長さんでね、私、劇団に入りたいの」

「「……はあ!?」」

「ここからは俺が説明します」


 劇団長が話を変わってくれた。そして、あらかじめ二人で考えた内容を語る。

「この子には才能があります。劇団に入ることで……。────と、いう訳で娘さんの入団を許可していただきたい」


 両親は考えた様子だったが、預かっている間の費用はいらないこと、定期的に近状を報告すること、そして私自身が望んでいることで最終的には許可してくれた。


「では確認します。一年に一度は手紙で近状報告をすること。団員の働き以上のことを要求しないこと。費用は必要ありませんが、ミアが働いて稼いだお金はミア自身のものであること。……以上で相違ありませんか」

「「「はい」」」



──ミア・セルキア。10歳にして、歌劇団に入団が決定。


*****


「確かに仲が悪い訳ではないが、お互いに素を出していない、というか、壁を感じたな」

「……あれだけの会話でよく分かったね?」

「伊達に団長していないからな。団員の演技指導や喧嘩の仲裁など、人の観察は得意な方だ」




【次回予告】

ミアの今後が決まったところで、次回、ジークが出てきます。

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