第2話 スライムと転生特典
「はあ…………」
最近溜息が多くなった。
というのも、ハズレ才能【スライムテイマー】を開花してから父に言われたのは、「お前はこれから我が家の令嬢として他家に嫁いでもらう」と高らかに宣言されてしまったからだ。
それもあと二年後らしい。
まだ十二歳だよ!? 速すぎない!? 異世界、恐るべし。
私はその陰謀を阻止するべく、何とかハズレと言われたこの才能を活かせないかなと悩み始めた。
---------------------
名 前:ルナ
年 齢:10歳
才 能:スライムテイマー
スキル:
〖スライムテイム〗〖スライム能力上昇〗
〖スライム進化〗
---------------------
これが現在、私が持つスキルだ。
スライムテイマーがハズレだと言われる所以は、最弱魔物であるスライムしかテイムできないこと。
しかも、大半が一匹から三匹までしかテイムできないので戦力としてかなり低い。
スライムじゃないテイマーなら当たりなのに、テイマーの中でも唯一ハズレのスライムを引いてしまった。
ただ、私は絶望してはいない。
その理由としては、このステータス画面の名前の隣に薄い文字で書かれている言葉があるからだ。
《転生特典:無制限》
これが何を意味しているかは分からないけど、やっぱり私って異世界転生していたのは確定みたいだ。
さては、街の外に出てスライムをテイムしてくるとしよう。
街の外にある森の中にスライムが生息しているという泉にやってきた。
私の後ろには二人の護衛が付いている。これでも貴族令嬢だからね。子爵家といえば、貴族の中では上で、お父様もお偉いさんらしい。一緒に住んでいないし、そんなに多く会っていないから父という感情は全くないけど。
二人に見守られながら泉を見回る。普通の魔物は結構怖そうな魔物ばかりだった。大きい狼とか、緑肌の化け物とか。
少し待っていると、待望のスライムが現れた。
「可愛い~!」
思わず声に出してしまったスライムは、まん丸い体を持ち、水色で透き通るくらいに綺麗な色をしている。
さらにつぶらな瞳があり、とても魔物とは信じられないくらいに可愛い。
「ルナお嬢様。スライムは最弱とはいえ、魔物です。気を付けてください」
「わかりました。ではこの距離からテイムを試してみます」
やり方は本で読んでいるので大体わかっている。
両手を開いてスライムに向ける。
「我が名は【ルナ】。我が声に応えよ! 【スライムテイム】~!」
私の両手から不思議な光が放たれ、スライムを包み込んだ。
じっとスライムと目と目を合わせる。
次の瞬間、スライムが柔らかい表情で私に向かってぽよんぽよんと音を立ててやってきた。
「どうやら成功のようです」
「おめでとうございます」
私の胸に飛び込んだスライムを抱き締める。
二匹目のテイムもチャレンジしてみたけど、どうやら私は一匹しかテイムできなかった。チャレンジも終わり目的を果たしたので家に帰った。
◆
---------------------
種 族:スライム族
個 体:水スライム
スキル:
〖分裂〗〖水ボディー〗〖水魔法〗
---------------------
私の初めての従魔となったスライムは、水スライムという個体のようだ。
スキルは水に関するものが多いね。
それから分裂や水魔法を見せてもらったけど、分裂はほぼほぼ無理だった。直径四十センチ程のスライムから拳サイズのスライムが分裂しても自我を持たなかった。
水魔法も手洗いができるくらいの強さが限界だった。
私には転生特典として《無制限》が付いているはずなのに、それは何に適応するのだろう?
その時、ふとステータス画面の薄い文字が気になった。
どうしてこの特典だけ薄い文字なんだろう?
ステータス画面を開いてみると、やっぱり薄い文字で書かれている。
う~ん。押したら何か変わったりしないかな?
伸ばした指が画面に触れる。
――《転生特典の無制限を発動しますか?》
発動するパターンか! 押してみるもんだね。
答えはもちろん――――発動。
すると、テイムしたスライムがぶるぶると震え始める。
---------------------
名 前:ルナ
特 典:無制限
年 齢:10歳
才 能:スライムテイマー
スキル:
〖無制限スライムテイム〗
〖無制限スライム能力上昇〗
〖無制限スライム進化〗
---------------------
あ……スキルの前に無制限って付いてしまった。
心なしかスライムがさっきよりも、ずっと強そうなオーラを放っている。
---------------------
種 族:スライム族
個 体:究極水スライム
スキル:
〖超分裂〗〖完全水ボディー〗〖水魔法〗
〖運動能力超絶上昇〗〖魔法能力超絶上昇〗
---------------------
あ……スライムのスキルまで変わった。さらに二つのスキルまで手に入れている。
「えっと、分裂してもらえる?」
言葉は通じなくても想いは通じる。それがテイマーと従魔の関係だ。
スライムは嬉しそうに分裂を始めた。ううん。ただの分裂じゃなくて――――超分裂だ。
「ま、待ったああああああ!」
あまりにも超速で分裂してしまったせいで、家の中がスライムだらけになってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます