第15話 鈴花の確信?

 アリサさんとのコラボ配信から数日。

 色んな配信を行ったり、相変わらずアリサさんのダンジョンから少しづつきんを持ち帰ったり忙しい日々だった。


 でも楽しかった。

 鈴花とずっと一緒にいられる生活が、これ以上ないぐらい楽しかったんだ。


 そうして、鈴花とるんるんな日々を送っていたのに、


菊園きくぞのさん! 好きです付き合ってください!」

「ワフゥ?(ああん?)」


 鈴花が告白されるのを目撃してしまった。


 ここは学校。

 子犬の姿で学校に来るのは今日が初めてだ。

 鈴花には止められるので、もちろん内緒で。

 

 学校での鈴花はどんな様子なのかなーと、探偵気分でこっそり付いて来たわけだけど、朝から嫌なものを目撃する。


 なんだあのハエ、しっしっ、どっか行ってくれ。

 顔は……ちっ、かっこいいな。


「わ、わたし、高木先輩とは……」

「親しくなったのが最近だとは分かってる! でも好きなんだ!」

「……」


 なーにが「でも好きなんだ」だよ!

 ていうか高木って……一つ上のサッカー部の人か。

 全国大会でも活躍したらしいな。


「どうするどうする!?」

「高木先輩に迫られたらOKしちゃうよね!」


「ん?」


 ふと良い耳を傾けると、それを眺める女子高生たちが。

 あれは鈴花の友達だな。


「高木先輩。イケメンで、スポーツ万能で、医学部志望で、親が医者で、本当に凄いよね!」

「そうそう! 将来有望って感じ!」


「ワフっ(けっ)」


 なんだよその、二郎の「ヤサイマシマシアブラマシマシカラメニンニク」みたいな高スペックはよ。

 聞いてて嫌になってくるぜ。


 いっそのこと、俺が邪魔してやろうか!

 

 だけど、次に聞こえて来た会話に足が止まる。


「鈴花ちゃん。あの件ショックだったもんね」

「うん。犬成くんの件ね」


「……」


 それに反抗することはできない。

 俺は空を見上げて冷静になった。


 俺はいつまでも鈴花と一緒にいたい。

 でも、それが鈴花の為になるかと言ったら、必ずしもそうではない。

 こんな風に俺は嫉妬しっと深いしな。

 

 今になって、ようやくそれを自覚した。


「高木先輩」

「鈴花ちゃん」


 ふと思い当たることがある。

 最近LINEをよくしていたのは、この先輩だったのかな。

 自衛のためにあえて見ていなかったけど、親し気な感じからそれなら納得だ。


 もういっそ、このまま付き合ってくれた方が俺も切り替えられるのかな。

 なんて思っていたが、


「ごめんなさい!」

「え」

「ワフ(え)」

「「え」」


 それを見ていた全員が「え」と言葉をこぼした。

 

 え、まじでなんで?

 超優良物件じゃん?


「す、鈴花ちゃん! 俺に足りないことがあったかな? もしそうなら──」

「いえ」


 そう言うと、鈴花は高木先輩に一歩近づいた。


「高木先輩はすごく素敵だと思います」

「……!」

「あれからずっと声を掛けて下さいましたし、本当に心の支えにもなりました」

「じゃ、じゃあ──」


 目を見開いた高木先輩に、鈴花はニッコリと笑った。


「でも、そうじゃないんです」

「どういうこと? 鈴花ちゃん」

「ふふっ」


 鈴花は高木先輩にもう一歩近づく。


「これは誰にも内緒ですよ」

「う、うん!」


 なんだ、耳打ちか!?

 周りには聞かれたくない話なのか!?

 でもなめるなよ、この最強のボディーを!


 俺は思いっきり耳に神経を集中させた。

 これで耳打ちだろうと会話は聞こえる。


 鈴花は高木先輩に耳打ちをした。


「幸也は生きてるんです」

「え!?」

「ワフ!?(え!?)」


 それだけ言って、鈴花は離れる。


「す、鈴花ちゃん、それは、その……」

「……ふふっ」


 高木先輩の言いたいことは分かる。

 「それは危ない」みたいな事を言いたいのだろう。

 

 でも鈴花は首を横に振る。


「信じても、信じなくてもいいです。でも私は確信してます。だからごめんなさい。高木先輩とは付き合えません」

「……そう、か」


 失意の高木先輩。

 なんかあの人にも同情してきた。


「また何かあったら相談に乗るから」

「はい。ありがとうございます!」


 鈴花は爽やかな笑顔だ。

 とても危ないことを信じてる人には見えない。


 じゃあさっきの言葉は一体どういう……?

 もしかして、俺がそうだとバレてる……?


 いや、まさかな──って!


「ワフ!(あぶね!)」


 考え事をしていると、一瞬鈴花がこっちを向いた気がする。


 見られたか? いや、多分大丈夫!

 それにしても……


「ワフ」


 不思議だったな。

 これは探りを入れる必要がありそうだ。

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