第14話 お宝お宝ゴールドラッシュ!
「ワフ!(これは!)」
地下の奥深くでガキン! と、鋭利な爪が何かに当たるのを感じた。
その瞬間、
「……!」
目の前が金色で埋め尽くされる。
「ワフウウウウ!(うわああああ!)」
俺はその勢いに押され、掘り進めてきた道を勢いよく戻されていく。
俺の爪が当たったのは大きな宝箱だったようだ。
それを引っかいたことで、宝箱が盛大に開き、一気にお宝が
そしてそのまま、
「ワフゥッ!(うわあっ!)」
地上に打ち上げられた。
「ユキ君!?」
「子犬!」
《なんだなんだ!?》
《打ち上げられたぞ!w》
《子犬ー!》
《てかなんだよこれ!》
《金ピカ!》
《ゴールドラッシュ!?》
《すげえええ!》
鈴花にアリサさん、視聴者もびっくりしている。
そりゃそうだ。
なんたって、
「ワフ、ワフッ!(うお、おわっ!)」
今、ゴールドラッシュとも呼べる「金の温泉」みたいなものに胴上げされてる状態なのだから。
「ワフッ!(ほっ!)」
そして着地。
俺は改めて後ろを振り返る。
「ワフ……(なんだこれ……)」
ジャラジャラ! ジャラジャラ!
俺が掘った場所からは、今なお大量の
まるで温泉の水脈を当てたみたいに、金が打ち上げられているんだ。
「ユキ君! これはどういうことなの!」
「ワフ……?(さあ……?)」
俺に駆け寄ってきた鈴花。
質問に答えたいのは山々だが、俺も事態がイマイチ飲み込めていない。
『すごいね!』
「ワフ(あ)」
そこにスライム君がやってくる。
「スライム君は分かってたの?」
『おっきな宝箱だとは分かってたよ! これもナマズ君から聞いたんだけどね!』
「へえ」
『でも、こんな温泉みたいに溢れるとは思わなかったよ!』
前から知っていたスライム君も、ここまでの規模だとは想定していなかったみたい。
『とにかくすごいよ! ほら! アリサさんもすっごく喜んでる!』
「アリサさん?」
スライム君が見た方向を見ると、
「やばば〜! 何これすっご〜い!」
両手放しで大喜びするアリサさんが。
現金だなあとは思うけど、自分のダンジョンからこんなに金が溢れたら、そりゃあ嬉しいよな。
俺も鈴花に抱き上げられて、アリサさんの元へ。
鈴花が話しかける。
「これっていくらぐらいになるんでしょう……」
「うんじゅう億は下らないかも〜」
「ええ!?」
「ワフ!?(まじ!?)」
たしかにこれだけ金があれば……。
さらに、アリサさんが情報付け足すように教えてくれる。
「あとはほら、所々に宝石みたいのあるっしょ〜」
「ありますね……」
「多分魔石だね〜。売ったらかなりする」
「あわわわわ……」
鈴花はすでに話に追いつけていない感じだ。
頭の良い鈴花が、目をぐるぐると回しながら混乱しているように見える。
鈴花のこんな姿は見たことがない。
《なんじゃこりゃww》
《やばすぎwww》
《魔石も混じってるとかまじかよ!w》
《まさに一攫千金!!》
《こんなのが埋まってたなんて》
《ただの癒しダンジョンじゃなかったか》
《元取れるどころか何百倍だよwww》
そうして、アリサさんが金に手を付け始める。
「んじゃ、山分けしよっか〜」
「え!?」
「ワフ!?」
今、アリサさん、山分けって言ったか?
彼女のダンジョンなのに?
「いやいや〜、子犬が当ててくれたんだし? それぐらい当たり前っしょ〜」
「そ、そんな! わたしは!」
「ワフ!(いいや!)」
「……ユキ君?」
鈴花がまた遠慮しようとしたので、声を上げた。
まったく、鈴花は良い子ちゃんすぎるよ!
「ワフフ!(ほら見て!)」
鈴花に対して、俺はコメント欄を指す。
《鈴花ちゃんもらっておきな!》
《遠慮しなくていいよ!》
《いつも家を見てて心配してた》
《女子高生だしオートロックにもしなきゃ!》
《マンションにするのはアリ!》
《これで好きな物買って》
《アリサさんも貰ってほしいって》
「皆さん……」
「ね〜? さあさ、山分け山分け〜!」
「あ」
アリサさんにも再び言われて、鈴花の元に金が積み上げられていく。
「ありがとうございます……!」
鈴花はそう言うとアリサさんを手伝い始めた。
これで鈴花の生活が楽になるといいな。
「あ、でも、一気には持ち帰らず少しずつね〜」
「どうしてですか?」
「発掘物は、ダンジョンから持ち出してやっと金品になるの。だから一気に持ち帰っちゃうと税金たくさん取られちゃうよ〜」
アリサさんは何事もなく言った。
「なるほど……」
「ワフ……」
そういうとこ、意外としっかりしているのか。
「ここはうち所有のダンジョンだから他人は入らせないし、鈴花ちゃんの分は勝手に持ち帰らないよ。だから安心してね〜」
「あ、ありがとうございます……」
それから、ますます目を回した鈴花とアリサさんと共に出てきた金や魔石を山分けした。
苦労していた
というか、もうお金持ちだな。
そうして、山分けが終わった頃。
「本当にありがとうね! ユキ君!」
「ワフッ!」
鈴花に思いっきり撫でられた。
これだけで頑張った甲斐がある。
そう思えるから、俺って単純だよなあ。
「って、あれ?」
「ワフ?(どうしたの?)」
だけど唐突に、鈴花が俺の首元を見て不思議そうな声を出した。
「なんだろうこれ」
「ワフ!(え!)」
俺の首元には「鍵」がかかっていた。
いつの間に?
ゴールドラッシュに夢中で気づかなかったのか?
「宝箱から出てきたのかな? 大事にしないとね」
「ワフ!(うん!)」
何の役に立つかは分からないけど、鈴花は物を大事にする子だ。
彼女を見習って大事にしよう。
「意外とそれが一番のお宝だったり〜?」
「そんなまさか」
「それは分からないよ〜」
「ワフフ(あはは)」
軽口を言いながら、アリサさんはカメラに向き直る。
「んじゃ、今日の配信はここまでで〜。いんや、我ながらすごい配信になったね」
《楽しかった!》
《まじで伝説》
《すごすぎたよww》
《こんな配信もう見れないw》
《やっぱ持ってるよなあ》
《見に来てよかったー!》
「それもこれも、鈴花ちゃんと子犬のおかげだね〜。みんな改めて感謝しよ〜」
《88888》
《鈴花ちゃんありがとう!》
《良かったね!!》
《まじうらやまだけど、こっちも楽しかった!》
《ありがとうね!》
《子犬すごかったぞ!》
《お前のおかげだ!》
「こちらこそです! 本当に本当にありがとうございました!」
「ワフフ(ありがとうございました!)」
こうして、初のコラボ配信は伝説となり、俺たちはさらにとんでもなくバズることになった。
その影響は
だけど、
「ワフ、ワフフ(この鍵、まじなんなんだろ)」
真のお宝が俺の首元に宿っていたことは、この時はまだ知る由もなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます