第12話 まさかのお誘い!?

 鈴花のダンジョン配信がバズり、一週間後。

 夕食を終えて、今は鈴花の部屋だ。


「ということがありまして〜」

「ワフゥ」


《それは草》

《ユキ君さあw》

《やっぱただのエロ犬だわw》

《中身人間だったら許してない》

《鈴花ちゃんも鈴花ちゃんだろw》

《話うまくなったよなあw》

《面白いです!笑》


 すっかり配信者になっていた鈴花は、今日も配信をしている。

 今日はダンジョンではなくて雑談配信だけどね。


 なんたって、今日はとっておきのお知らせがあるからな。


「あ、そろそろ時間ですね!」


 時計に目を向けて、20時になったことを確認した鈴花はそのお知らせの話に移行する。


《お!》

《いよいよか》

《もうそんな時間!》

《雑談も普通に面白かったけどな》

《お知らせなんだろう?》

《楽しみ!!》


「ふふふっ」


 コメント欄の反応も楽しみつつ、鈴花は満を辞してお知らせをした。


「この度、あの電波アリサさんとのコラボが決まりました!」


 お知らせの内容は「初のコラボ配信」だ。

 それも相手は『電波アリサ』。


 加目羅かめらさんの配信機材の店で偶然に出会い、共に写真まで取ったあの金髪お姉さん。

 あのチャンネル登録者150万人、SNSフォロワー200万人を超えるインフルエンサーとついにコラボするのだ。


《うおお!?》

《まじかよ!?》

《あの電波アリサ!?》

《それはやばいー!!》

《おめでとう!》

《おめでとうございます!》

《すごすぎる!》

《もう止まらないね!!》

《電波アリサがコラボするの!?》


 この発表にコメント欄は大盛り上がり。


 そりゃそうだ。

 彼女とコラボするのは、普通のコラボをするのとは訳が違う。

 

 鈴花にとっても初コラボ配信だが、実は電波アリサもコラボ配信なのだ。


 彼女の配信歴は5年。

 配信者としてはそれなりだが、これまでコラボは一度もないという。


 そんな彼女が、今回はなんと向こうからコラボを持ち掛けてきた。

 それに「絶対に伸びる思ったから、変な誤解をされないように伸びてから誘ったんだよ~」とも言っていた。


 変な誤解というのは「鈴花が金を払ってコラボした」とか、「売名だ」とか言われるかもしれないとという意味だろう。

 ネットはそんな場所だからな。


 とにもかくにも、これはすごいことなんだ!


「コラボ配信は今週の土曜日です! 見てね~!」


《絶対見ます!》

《これは配信界に激震》

《これはやばい予感》

《ニュースどころじゃねえ!》

《もうトレンド入ってるぞ!》

《本当だ!》

《すげえ! もう一万ツイートだって!》

《えぐいいいい!》


 最高のお知らせをして、今日の配信を終えた。






 土曜日。

 今日は電波アリサとコラボ配信の日だ!


 俺も楽しみにしていたからどんなに長いかと思ったけど、あっという間だったな。

 まるで時が飛ばされたみたい!


 ちなみに今は、彼女の仕事場にお邪魔している。


「いよいよだね」

「ワフ」


 相も変わらず鈴花の胸元で抱えられている俺。

 でも今日は、ちょっと違うドキドキだ。


「緊張しなくていいよ~。子犬ちゃんもね~」

「アリサさん!」

「ワフフ!(アリサさん!)」


 当然、アリサさんのコラボ配信配信だからだ。


 ほんわかとした雰囲気だけど、緊張する俺たちに声をかけてくれて優しいな。

 

うちの・・・ダンジョン。特別弱いからね~」

「は、はい! うかがってます!」

「あはは〜。せっかくのコラボなんだし、敬語が過ぎるのもよくないよ〜」

「そ、そうですね!」


 彼女が言った通り、配信の内容は「ダンジョン配信」。

 それも彼女が所有する・・・・ダンジョンでの配信だ。


 個人ダンジョン。

 自然発生したダンジョンを金で買い取るという、お金持ちにしかできない所業だ。


 買い取るお金はダンジョンが強くなるほど高くなるので、「ここはそこまでだよ~」と言っていたけど、正直俺には想像できない世界だ。


「それでも、どうしてわざと弱いダンジョンを?」

「ん~。だって、別に攻略とかしないし?」

「そうなんですか?」

「うん~。まあ、別荘の一個的な?」

「「……」」

 

 なるほど、それで特別弱いダンジョンを買い取ったのか。


「あとは、今日みたいな時に便利じゃん?」

「コラボの時用に、ってことですか?」

「そいこと~」


 すごいな、これが超インフルエンサーか。

 考えが完全に時代を先行している。


 ボーっとしているようで、色々と見えている景色が違うのだろうな。


「てことで、もうそろ本番だよ~!」

「は、はい!」


 アリサさんが立ち上がったのに反応して、俺たちも立ち上がった。


「配信つけるよ〜」

「はい!」

「ワフッ!」


 そう言うと、アリサさんは配信を開始した。


「みんなこんち〜。アリサで〜す」


《こんち〜!》

《アリサちゃん!》

《待ってたー!》

《楽しみにしてたよ!》

《コラボ配信だよね!》

《こんち!》

《初コラボ配信だー!》


「そ。今日はこの方たちとコラボだよ〜」


 アリサさんが俺たちの方に手を向けた。

 コラボ相手を紹介するタイミングだ。


「はじめまして! 鈴花といいます!」

「ワフ!(ユキ君!)」


《おーきたあ!》

《鈴花ちゃんのチャンネルから来たよ!》

《本当にコラボなんだ!》

《鈴花ちゃんかわ》

《いっぬ!》

《子犬ちゃん!》

《かわいいー!》


「んじゃ、ダンジョンの方移動していきます〜」


 こうして、アリサさんとのコラボ配信が始まった!

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