第10話 エゴサする子犬

 「ワフ……(すげえな……)」


 鈴花のスマホを借りて、俺はエゴサをしている。

 鈴花はダンジョンの・・・・・・準備中なのでね。


 彼女が言っていた「行きたいところ」は、なんとダンジョンだったのだ。

 

「もうちょっと待ってね~」

「ワフー(いいよー)」


 鈴花の声が聞こえた。

 その間、俺はエゴサを続ける。


 バズっているのは、俺のお食事動画とそれの切り抜き、鈴花のアカウント自体だ。

 前にギャルの陽野ひのさんが来た時、「せっかくなら」ってことで鈴花にアカウントを作らせていたんだよな。


 それが……もうフォロワー10万人。

 俺のお食事動画は200万再生にもなる勢いだ。


 でも、そんな急に……って!


「ワフ!(この人!)」


 俺はようやくバズ元(?)を発見した。

 

 『電波アリサ』。

 あの配信機材の店で出会った彼女がインフルエンサーだったのか!


「ワフゥ(なるほどなあ)」


 どおりでバズるわけだ。

 その時の謎の敬礼ポーズや、動画の内容の甲斐あって、ちまたでは『賢いペット』として名が挙がっているらしい。


「ワフ、ワフフ……」


 褒められるのは嬉しいなあ。

 だけど、反対にこんなコメントも。


『これで賢いとかマジ?』

『これぐらい普通だろw』

『うちの犬の方が賢い』

『これぐらい出来ないとかww』

『お前らんちのペット頭悪いんだな』


「ワフー!(なにー!)」


 ちょっとムカついた。


 どこにそんなペットがいるって言うんだ!

 本当なら連れてこいやー!


 まあ、ネットってこんなものなのかもしれないけど。

 むうう、かくなる上はさらに凄い所を見せるしかないか。


「ユキくーん。行くよ~?」

「ワフッ!」


 あ、鈴花の声だ!


 準備が終わったらしい。

 ということは、いよいよダンジョン配信か。


「ワフゥ……!」

「ふふっ、どうしたの? すっごく気合が入ってるね」

「ワフ!」


 ネットの奴らを見返してやる!

 鈴花の為にも!


 俺の心は情熱に満ちていた。







 学校から遠めのダンジョン。

 前に、加目羅かめらさんを助けたダンジョンだ。


「今日はここだよ」

「ワン!(りょ!)」


 前はイレギュラー的に鬼の魔物『オーガ』が出たけど、そいつにも勝ったしな!

 レベル的には低いのだろう。


「じゃ、じゃあ始めるよ?」

「ワフ!(いつでも!)」

「……」

「ワフ?(鈴花?)」


 どうしたんだろう。

 配信を始めると言ってから、カメラを起動しようとしない。

 やり方は勉強してたはずだけど……。


「ごめんね、ちょっと緊張しちゃって」

「!」


 鈴花はちょっと手が震えていた。

 まあ、全世界に自分が見られる状態になるわけだしな。

 頑張り屋さんの鈴花も高校生だったってことだ。


 よーし!


「ワフ!」

「きゃっ!」


 俺は鈴花に飛び込んだ。

 ポフン、と胸部を掴み(わざとじゃないよ!)、そのまま上へと登っていく。

 そして、俺は彼女の肩に乗った。


「ワフ!(俺がいるよ!)」

「ユキ君……」


 気分は相棒だ。


「そうだね! 頑張ってみよう!」


 鈴花は配信を開始する。


《あ、きた?》

《始まった!》

《おおお!》

《待ってたよ!》

《初配信!》

《見に来たよー!》


 途端に、コメントがバーッと流れる。


「え、え? 何がどうなってるの?」


 鈴花はまだ状況を飲み込めていない。


 そうだろうな、告知をしたのは俺だからな。

 さっきエゴサしていた時、ついでにと思って俺はSNSで配信をする告知をしておいた。


 すぐにコメントをくれた人達は待機していたのだろう。

 それでもこんなに来るとは思わなかったけど。


「ワフワフ!(行こう鈴花!)」

「ユキ君! うん……!」


《楽しみにしてたよ!》

《初見です》

《↑そりゃそうw》

《肩に乗ってる~》

《本当に賢いかチェックしにきたぞ》

《今のところ並以下》


「ワフッ!(むむっ!)」


 最後の方のコメント、絶対に見返してやるからな!

 そう思いながらも、俺たちはいよいよダンジョンへと足を踏み入れた。 


 最近話題になっていた『鈴花のペットチャンネル』。

 それが初配信を始めるということで、一気に人が集まる。


 現在の視聴者数は3000人。


 俺たちはこの配信でさらにバズることになるとはまだ知らない──。





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いつも応援ありがとうございます!

あらすじの方はすでに変わっているのですが、これからはお昼の12時台に更新を変更したします!

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