第2話 お持ち帰りされました
俺は自分でも驚きながら、ゴブリン達を一掃。
この場には、俺と
「えっと……?」
「ワフ……」
ど、どど、どうしよー!
とにかく鈴花を守るのに必死で、こうなった時を考えていなかった。
俺はハッ、ハッ、と子犬の声を出しながらあたふたする。
そんな様子を見てか、彼女は完全に警戒心を解いて笑った。
「ふふっ」
「ワフ?」
「君は守ってくれたんだね」
「!」
鈴花は両手を広げる。
え、えええ!?
それってまさか……抱っこですか!?
「おいで」
「……!」
やっぱりー!!
どうする俺……。
あとで運良く人間に戻ってバレたりしないか?
「あれ、こないの?」
「!」
いや、子犬ならここでいかない方が不自然だ!
そうだ、俺は子犬、俺は子犬、俺は子犬……!
強く念じ、目を
柔らかいものにあたった瞬間、彼女に包まれた。
「やっときた!」
「……!」
こ、これはまずいー!
鈴花のお、おっぱ〇が全身に……!
「どうしたの? 暴れちゃって」
「ワフ、ワフ!」
「逃がしませーん」
「ワフゥ!?」
鈴花はさらに俺を強く抱いた。
これを男子高校生に耐えられると思うなよ!
相手は好きな女の子だぞ!
「さてと」
「?」
そうこうしているうちに、鈴花は俺を離して立ち上がった。
抱かれている時は心臓が爆発しそうだったけど、離されると悲しい。
「守ってくれてありがと。おうちに帰るんだよ」
「!」
鈴花は優しそうな目で俺が来た方を指差した。
その瞬間、心にズキンとくるものがある。
せっかく会えたのにまた離れるのか。
たしかに普通の状況ではないけど、俺は彼女と離れたくなかった。
でも、そりゃそうか。
魔物とずっと一緒にいる方法なんて……待てよ。
一つ、彼女と一緒にいられる方法がある。
でもかなり恥ずかしい!
いいや、覚悟を決めろ
「ワフ! ワフフ!」
「どうしたの? まだなにかあるの?」
「ワ、ワフー!」
「え……!」
俺は彼女の足にしがみついた。
何やってんだと思うが、方法はこれしかない!
彼女に「ペットとして飼ってもらう」、これなら一緒にいられる!
「もしかして、ペットにしてほしいの?」
「ワフワフ!」
「うーん……」
だけど彼女は素直に首を縦に振らない。
「私の家は貧乏だし……」
「!」
ペットにする為の費用を気にしているのか。
くっ! 相変わらず優しいな!
そうなれば!
「ワフ! ホゥワッ!」
「びっくりした。どうしたの、急にジャッ〇ー・チェンみたいな声を出して」
「ホウ! ワフゥ!」
俺は全力でカンフーの真似をする。
なんとか伝わってくれー!
「俺がいればダンジョンで稼げる、ってこと?」
「ワフワフ!(それそれ!)」
「……なるほど」
鈴花は口に手を当てて考える。
そして、
「わかった」
「……!」
「じゃあ今日から君は私のペットだ」
「ワフーイ!」
彼女は承諾してくれた。
俺は両手をバンザイして喜んだ。
“好きな人のペットになる”。
至って健全な関係だ!
「それなら名前を付けてあげなきゃ」
「!」
鈴花はまた俺を抱きかかえる。
ドキドキすると同時に、なんだか鈴花の胸元が心地よくなってきた。
「じゃあ、君はポチだ」
「ワフ!?」
そ、それは色々とまずい!
なにか新たな扉が開いてしまいそうだ!
しかもちょっとSっ気のある顔で言わないで!?
18歳になっていない俺たちには早いんじゃないか!?
「ダメ? さすがに単純すぎたかあ。じゃあ……」
「ワフリ(ごくり)」
「ユキ君」
「……!」
え、その名前って……。
俺の下の名前は『幸也』。
小学生時代、鈴花には『ユキ君』と呼ばれていた。
中学生からは恥ずかしがって呼ばれなくなったけど、あの時は彼女だけの、幼馴染ならではの呼び名だったんだ。
「白くてふわふわなので!」
あ、なんだそっちか。
白くて冷たい、冬に降る『雪』ね。
「あとは、ちょっと懐かしい呼び名も思い出したりしてっ」
「……!」
鈴花はボソっと、恥ずかしそうに言った。
それってやっぱり……?
「じゃあ行こ! ユキ君!」
「ワフッ!」
こうして俺は、お持ち帰りされました(鈴花のペットになりました)。
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