第2話「ゴブリンとの戦い」


 あれ、今回の女神様は。


「ようこそ、この世界へ」


 少し、顔色が悪い気がする。


「さて、では早速ですが」


 まあ、いいや。


「貴方のステータスを」

「あっ、はい」


 今この僕が、自分がなぜここにいるのか、その理由は解らないが、とにかく。


「……そう」

 

 ステータス・オープン!!


――HP/0――


――武器/ひのきの定規――


「……」


 実に頼りない、武器だ。


「さあ、行きましょう勇者殿」

「……はあ」


……キィ


――……ん?――


 この、僕の目前で微笑む女神様の手にある。


――……あの、何か安っぽい感じがする――


 何か、小さなアクセサリー。


「……僕は、どこかで」


 見たような、気がする。




////////////////




 僕は。


――ゲッヒャヒャ!!――


 いや、僕達は、無数の刃に囲まれている。


「くそ、ゴブリンか!?」

「逃げて、ここは私の魔法で!!」

「そんな、君を置いてなんか!!」


 僕は、彼女を護りたかった。


「さあ、私の魔法の力を、食らいなさい!!」


 でも。


――キャア、アァ……!!――


 出来なかった。


――コノ、人間ヨワイ!!――

――俺タチに、魔法、キカナイ!!――


 その、太刀打ち出来ない程の「目玉」が。


……ジィ


 嗤う目玉達が。


 ニィ、チャ……!!


 こびりついた、穢らしい短剣から、僕は。


――……クン、……君、私を、助ス――


 彼女を、護りきる事が。


――助ス、ケテ……――


 出来なかった。




////////////////




 その、残酷無比なゴブリン達の持つ、猛烈な毒が塗られた刃の群れを、僕達はどう潜り抜けたのか。


「……痛い」


 全く、解らない。


「……あそこで、僕の武器の、ひのきの棒が、折れている」


 ただ、僕の身体中は、傷だらけだ。


……トゥ


――……ん?――


 水音、水滴の落ちる音。


 トゥ、ン……


 これは、解る。


――……ごめんね――


 涙だ、彼女の。


――……君――


 僕は、その彼女に向けて自分の顔を。


――泣かないで、……ちゃん――


 全く、身動きが出来ない僕の身体をその、華奢な躯。


「ボクは、ダイジョウ、ブ……」


 その、折れそうな両膝に乗せている、彼女に微笑みかけようとしたが。


……ズ、キォ!!


――……ッ!!――


 痛みで、口が開かない、強張る。


――今、病院に連れていくからね、……君!!――


 ごめん、本当にごめん。




////////////////




 でも、僕は彼女から。


「ありがとう」

「……ああ、いや」


 あのゴブリン達との戦いの後に、その数日後にお礼を言われ。


「……僕は、君が無事なら」

「……」

「なんとも、ないよ」

「……キザね、もう」


 と、お互い、泥にまみれたまま、微笑み合う。


――僕達は、このセカイで、もう何回も――


 それのみが。


――助け合って、来た――


 今回の戦いで、唯一の救い。




////////////////




……トゥ


 この、水滴の音は。


 トゥ、ン……


 お互いの、嬉し涙だと思う。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る