第41話 酔っ払いの商談



 宥子ひろこからドロップアイテムの半分は使っても良いと言質を取った私は自分でカスタムした装備品を作れると舞い上がっていた。

 が、契約ティムカルテットも物作りに味を占めたのか、ドロップアイテムを私からクスねて色々と作っているのだった。

 宥子ひろこはサイエスと現実世界を行き来し、何やら忙しそうである。私は、容器とかを一定の量を作り終えたのでサイエスでブラブラとしていた。

 <情報収集は酒場やでぇ~>

 遠回しに酒飲ませろと言っている赤白せきはく

 <偶には異世界の飯を食ってみたいわぁ>

 <サクラはぁ~甘いのが良いですぅ~>

 「キシャシャ」

 紅白こうはく、サクラ、楽白らくはくちゃんも赤白せきはくにちゃっかり便乗してきた。

 行動パターンが契約ティムカルテット似てきてるのが困る。

 「お前等デブるで…」

 私の呟きも契約ティムカルテットはスルーして酒場、酒場~と急かすのであった。




 宥子ひろこのゴブリンリン一万の軍勢って異常だと思う。それに私が襲撃したゴブリンの巣も異様だった。普通のゴブリンの巣よりも多分数十倍豪華だったし、何より詳細な世界地図も手に入った。

 宥子ひろこは悪運だと言ってたが、悪運で済まされないんじゃなかろうか?

 私は街一番と言われる酒場に来ている。

 「美味しいお酒頂戴♡」

 久々のお酒に浮かれていた私はバーテンの姉ちゃんに

 「あらぁ、子供にお酒は出せないわぁ~」

とジュースを出された。酷い。

 もう直ぐアラサー世代の私だが、サイエスではサバを読んで18才にしているから飲めると思ったのに!!

 「私は18才ですよぉ!!お酒飲みたい!」

 ブーブーとブーイングをすると

 「ダメよぉ、18才って主張してもその童顔だと罪悪感が湧いちゃうもの~」

ジュースとお菓子で我慢しなさいとばかりに宥められた。ショックである。

 仕方なくジュースを啜りながら

 「最近、何か面白い話とかない?」

バーテンのお姉さんに聞くと

 「そうねぇ、基礎化粧品っていうのがとっても効き目が良いって評判になってたわ。私も買ったのよ。」

 宥子ひろこの化粧品の話になった。それは知ってるのでパスで!

 「他には?ん~王都からAランカーがこの街に来てるわよ。」

 「Aランカーかぁ、何でこの街なんだろうね?」

 「さぁ?」

 バーテンのお姉さんと世間話を交えて話していると後ろから声を掛けられた。

 「ゴブリンリン討伐の子じゃない??」

 後ろを振り返ると戦士風の男を中心としたパーティ一行がいた。ハーレムかよ。

 剣士風の女が

 「貴女、この間パーティ用のゴブリンリン討伐を付けた子よね?」

声を掛けてきた。誰だコイツと思ったら

 「あら~噂をすればって奴ねぇ。Aランカーの人よ。」

バーテンのお姉さんが彼女の素性を教えてくれた。

 「えっと、こんには??」

 何で声を掛けられたのか分からないので、一応挨拶だけしたら

 「パーティー用のクエストを単独で受けてたから、あの後心配して見に行ったのよ?追いつけなかったけど。」

マシンガントークが炸裂した。引き気味の私に

 「自己紹介がまだだったわね。私はチームバルドの魔導士リリアナよ。貴女の名前は?」

Aランカーの自信故か堂々と自己紹介をしてくるリリアナ。うん、ヒッキーの私には無理ポ。

 「……マサコです。」

グイグイ来る女の人だなぁ、と思ったら仲間が増えてた。

 「マサコちゃんかぁ、俺はバルドのギルマスはってる、戦士のガルガだ。宜しくな。」

 「マサコさん、私はバルド所属の剣士フィーアと申します。宜しくお願いしますね。」

 「わたくしは、彼等と同じくバルド所属の聖魔導士のテレサと申します。マサコ様、宜しくお願いします。」

 マサコ様ってwwww此処の中で草が生えた。何を宜しくるすんだ。

 「えっと、何の用ですか??」

 私はアンタ等に用事は無いけどな。

 「これ、お忘れ物ですわ。」

 スッと差し出されたフザケタ武器じゃねーかっ!!てか、あの大爆発でも傷1つ付いてないってどれだけチートな武器なんだ!!

 「あ、態々ありがとうございます。」

 ペコっとお礼を言って武器をメディションホールに仕舞う。宥子ひろこに報告しなきゃいけないだろうなぁ。

 「メディションホールも使えるんだな。俺達とパーティ組まないか?」

 男の誘いに

 「宥子ひろことパーティ組んでるんで、お断りします。」

キッパリと断ると

 「だったらあの武器を買い取らせてくれませんか??」

シスター風の姉ちゃんが買取したいと申し出た変な武器。一瞬迷ったけど、勝手に売り払ったら宥子ひろこが怒るから

 「宥子ひろこの許可いるから私では判断出来ない。ごめんなさい。」

遠回りにお断りするも

 「では、お姉様の許可があれば良いのですのね!?」

相手には通じなかった。宥子ひろこよ、すまん。

 「あーまぁ、そうですね。武器は無理ですけど、こんなのはどうですか?」

 私はメディションホールから付与付きのアクセサリーの試作品と宥子ひろこから貰った化粧品セット(並)に化粧ポーチ等を机の上に並べた。

 「可愛い!!」

 「本当に綺麗ですわ。」

 「この化粧品って品切れしてた奴じゃないかい!私にポーチと一緒に譲っておくれよ!!今ならこの店一番のお酒とおつまみも出すよ!!」

 魔法使いのお姉さんと一緒に混ざっているバーテンの姉ちゃん。凄い手の平返しだ。

 「あーじゃあ、契約ティムしている子達がいるんですけど、大人しくしてるんで、飲み物とおつまみ、その子達の分も用意してくれたら化粧品は無理だけどポーチを安く譲りますよ。」

 バーテンの姉ちゃんに告げれば

 「本当かい!?良いよ、良いよ、沢山食べて飲んでおくれ!!」

OKが出たのでフードに隠れていた契約ティムカルテットを出した。

 <酒~酒、飯、飯、おーやーつ~>

 変な歌を歌いながらカルテットは身体を揺らしている。

 「白い!!幸運の蛇ですよね!?触らせて貰っても良いでしょうか?」

 幸運の蛇って何のこっちゃ?

 <触りたいって、どうする?>

 <わし等は別に良えで~>

 蛇ちゃんズの許可が出たのでOKを伝えようとする前にスルスルと二匹が剣士の姉ちゃんの腕に巻き付いた。

 剣士の姉ちゃん、蛇ちゃんズの魅惑のBodyにメロメロなのか声無き悲鳴?を上げていた。

 隣でソワソワしている聖魔導士の姉ちゃんがジーっとジーッと熱い視線をサクラに送っている。

 触りたいって言い出せないんだろうなぁと思って

 <サクラちゃん、あのお姉ちゃんに触らせてあげても良いかな?>

 <サクラはぁ、甘い物を沢山食べさせてくれるなら良いですのぉ!>

甘い物を引き換えにOKを出したので

 「サクラちゃんです。甘い物が好きなので、持っていたら上げると喜びます。」

聖魔導士の姉ちゃんの手の上に乗せる。

 楽白らくはくちゃんはサッサと逃げるようにフードの中に入っていった。人見知りだもんねぇ。

 私は出されたお酒とおつまみを堪能しつつアクセサリーや小物にガッチリ花を咲かせてる女性陣を眺める。一人ポツンと置いてかれたガルガのおっさん。

 「これ全部、マサコが作った物なのか?」

 アクセサリーなどを遠目に見ているガルガのおっさんに

 「化粧品類は宥子ひろこですよ。」

 あと変な武器は契約ティムカルテットが勝手に作成していたけど…うん、Aランカーだったら王都にも行くだろうし

 「ガルガさん、これ買いません?」

 ウェストポーチからゴツイバングルを出した。

 男性用のアクセサリーもデザインして売れないかなと思っていた、売れ残り商品である。女性のは売れるんだけど、男性のは全く売れなかった。

 「これはバングルか?」

 「はい、物攻+1000、魔防+500、毎ターン小回復付与があるんですよー。王都でマサコシリーズで宣伝でしてくれたら金貨10枚でプラスこの指輪が付きます!この指輪、魔力を込めれば火属性の中級魔法を誰でも放てますよ!」

 押し売りの如く指輪を握らせれば

 「俺でも魔法が使えるようになるのか?」

魔法の言葉にソワソワするおっさん。

 「使えますよ~パーティの方に魔力を補充して貰って装備すれば火属性中級魔法バッチリOKです。」

 「それは安いな!上級魔法のとかはあったりするのか?」

 食いつくおっさんに

 「あるけど、使用回数に制限があるけど見ます??」

ごそごそとウェストポーチを漁る。出てきた指輪をおっさんに見せる。

 「これですね。全属性の上位複合魔法を7発までなら打てますよ。聖魔法と闇魔法は無理ですけど…」

 「凄いな。これお嬢ちゃんが作ったのか?」

 お嬢ちゃんって年じゃねーんすけど

 「そうだよ。他にも色々と作ってるから、もし良かったら宥子ひろこと会って商談してみたら?武器は取扱いはしてないけど、防具やアクセサリー系などは取り扱ってるし、宥子ひろこなら今回の武器の件も考えてくれるかもしれないし。」

難しい事は宥子ひろこに丸投げしておいた。

 「分かった。お前のヒロコさんと話をしたい。都合の良い日はあるか?」

 「ちょっと待って、宥子ひろこに確認するわ。」

 念話で宥子ひろこに確認した所、明後日なら空いてると返事が来た。

 「明後日なら空いてるそうです。何時頃が良いですか?」

 「そうだな、一緒に昼飯でも食いながら話をしたい。ダメか?」

 「聞いてみますね。」

 昼ご飯一緒希望だけど~と言えば、速攻でOKが出た。絶対に渋ると思ったのに。

 「良いらしいです。冒険者ギルド前集合で良いですか?」

 場所をサクっと指定したら

 「あぁ、それで大丈夫だ。じゃあ、その時に商談って事で宜しく頼む。どうやって連絡を取ってるのか気になるな。」

ペコっと頭を下げ私はエールを飲みだした。彼の疑問には無視スルーしておいた。

 後に商品とお金を回収するのをサッパリと忘れており、宥子ひろこにコッテリ絞られ、バルドのメンバーから余った商品と代金の値段を後で支払われる事になるのであった。

 商談にお酒は飲んじゃダメと教訓が出来たのは言わずもがなである。

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